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第39話話し合い ショウ視点

ジュリと結ばれた翌朝。 お互いが『好き』だと認め合い、愛し合った翌朝。きっとジュリも幸せに微笑んでいると思っていたがそれはショウの完全な思い違いだった。 ジュリはレミウスに言われたことを気にしているのか、青ざめた表情で泣きそうになっている。 ショウは不安で震えるジュリを安心させるように抱きしめると「絶対に手放さない」と固く心に誓った。 ー--- 「だれか、いるか!」 朝早く、王宮の執務室に入る。 一階にある執務室は今は王の側近たちが会議やそれぞれの仕事をする場になっている。 この部屋に来る途中までジュリのフェロモンが溢れていて、二人が結ばれていることは一目瞭然だった。 ー-今頃、屋敷中この話題で持ちきりだろう。それなら全員執務室に集合しているだろうな。 その予感は見事的中。執務室にはレミウス、マーリンをはじめ側近全員がすでに席に座って待っていた。 「ショウ様。みな、聞きたいことは同じです。……どうぞこちらへ」 レミウスが眉間に皺を寄せながら立ち上がると、ショウに座るよう促した。 ショウは側近たちの視線が刺さる中、大理石で出来た長テーブルの中央へと進む。 ショウが席に着いたのを見計らって、マーリンが話しを切り出した。 「あの、ショウ様・・・・・・。ジュリさんのフェロモンが三階中、いや一階まで漏れています。この屋敷のアルファは全員緊急抑制剤を打ったので無事でしたが……」 「ジュリは昨夜、ヒートになった所を襲われた。襲ったのはこの屋敷のメイドと門番。ジュリのヒートが狂ったと同時に待ち構えていた二人・・・・・・これがどういうことかわかるか!」 拳を机に叩きつけ語気を強めるとその場が一瞬で張り詰めた空気になる。 マーリンが慌てるように立ち上がると「調べてきます」と言い部屋を出ていくと、その直後ショウはその場にいる全員に聞こえるよう声をあげた。 「俺は昨夜、ジュリと結ばれた。お互いの気持ちを確認した上だ。もうジュリは男娼じゃない。俺はジュリと結婚する」 ショウの報告にざわめきだす側近たち。レミウスにいたっては口をあんぐりとあけ呆然としている。 「そ、そんなっ……。もしかして番に!?」 「いや、それはまだだ」 「よかったっ・・・・・・ならば、ショウ様考え直してください!」 アイガリオンは立ち上がりショウに訴える。 するとそれに反発するようにショウも立ち上がった。 「俺にはジュリだけだ。アイガリオン・・・・・・君ならわかってくれると思っていたんだが」 「そ、それは・・・・・・」 前王の護衛をしていたアイガリオンは視線を下げると口をつぐんだ。 アイガリオンは騎士団と仕事をすることも多く、よく騎士団員と昼食を共にしていた。 その際、慣れない仕事も懸命にこなし、華奢で可愛らしい見た目とは裏腹に力作業も文句一つ言わずこなすジュリの事をえらく気に入っていた。 アイガリオンなら賛成はしなくとも反対はしない、そう思っていたショウは、肩を落とすと、はぁ…と一つ息を吐く。 ー-まさかここまで全員反対とは。こうなればジュリと共にここを出ていくか……でも魔族との戦いも終わってはいない・・・・・・。 片手で頭を押さえ、目をぎゅっと瞑る。この先どうしたらジュリをみなに認めてもらえるか、と考えを巡らしている時だった。 「すいません!!みなさん!!」 入ってきたのは「調べてきます」と部屋を出たマーリンだった。 右手で胸元を抑え荒い息を抑えるように深呼吸を二度ほどすると、ショウの顔を見ながらゆっくり伝えた。 「魔族が出たとの、連絡がありました」

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