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第40話味方 ショウ視点
あの戦いから数か月、どこを探しても見つからなくてもう死んだのではと思われていた魔族が現れた。
「どこで出た!デビアスか!」
「アエレ村です。デビアスかどうかは確認できていませんが、このままだと村が全滅です・・・・・・!」
アエレ村は人口わずか数百人程度の森に囲まれた小さい村だ。働き盛りの若者は近隣の大きな町に出稼ぎしていることが多く、住民のほとんどは老人か子供。
このままだと逃げることも出来ずに全員殺されてしまうだろう。
王宮からどれだけ馬を走らせても最短で三日はかかる事を考えると、ゆっくりしている時間はなかった。
「ショウ様っ・・・・・・!騎士団の準備は整っています」
「わかった、今すぐ向かう。・・・・・・話の続きは帰ってからだ」
ー---
「ショウ様、一度ここらで休憩しましょう。このペースで走り続けると馬が持ちません」
馬の隊列の先頭を走る騎士団長のラスティが隣で走るショウに話しかける。
アエレ村に向かう騎士団員はショウを含め十人と少人数だった。
「アエレ村に魔族が現れたのなら王宮が狙われる可能性もある」、というレミウスの助言もありほとんどの騎士団員が王宮に残ることになったからだ。
「だが、急がなければ・・・・・・」
「馬がへばれば村にたどり着くことも出来ませんぞ」
ラスティはぴしゃりと冷たく言い放つ。
馬の様子を見ての判断だろう、ショウは急ぎたい気持ちをぐっと堪えるとようやく首を縦に振った。
王宮から馬で走ること二時間、小川が流れる太い木下でようやく休憩を取る。
「ショウ様っ、顔色悪いけど……大丈夫っすか?」
木の根元で座り込んでいたショウに話しかけたのは、この隊で唯一ショウより年の若いネイサンだった。
ネイサンは最年少で騎士団に入団した弓矢の使い手で、その実力は騎士団で一位、二位を争うほどだ。
「あぁ……ネイサンか。すまない、今は魔族討伐が最優先なんだが、どうしてもジュリの事が気になって」
「そっか……ジュリさん、ヒート起こしたんですよね。マーリンさんが言ってたけど」
「落ち着いてはいたが、まだヒート期間なんだ。一人にしておくのが心配でしょうがない……」
唇を噛み締め、眉間に皺を寄せる。
まるで自分の番を心配するかの表情に不思議に思ったネイサン。
まさか、と思いながら言いづらそうにショウにたずねた。
「まぁ心配ですけど、薬あるんでしょう?あの屋敷に一人きりってわけじゃないんだし……。なーんか、ショウ様の顔見てると恋人っつーか番の話してるみたいですよ?」
「そうだ。ジュリは俺の番になる予定だ」
真面目な表情でネイサンの目をじっと見つめる。
その真剣な顔にネイサンはごくりと唾をのみこんだ。
「ジュリの事は『友人』と伝えていたが、俺は初めからジュリが好きだった。やっとジュリも俺を好きになってくれたんだ、これからも離れるつもりはない」
「まじっすか・・・・・・。でも、それなら早く仕事終わらして帰らないと!俺もアルファなんで、なんとなくショウ様の気持ちわかります。……もう馬も休憩したことですし俺、団長に出発できるか聞いてきます!」
立ち上がったネイサンはニッと笑うと「俺は応援してますから」と一言つげラスティの元へ走っていった。
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