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第42話王宮へ戻る ショウ視点

「それはどういう事だ?この村は無事なのか?」 「昨日町長さんが来て、ここがしばらく使えなくなるからみんな移動してくれって言われただけ。あとはわかんないよ」 「そんな・・・・・・魔族は!?」 「魔族ってなんのこと?そんなの見たことないよ……」 ー-そんな・・・・・・!魔族が出たから俺たちが呼ばれたんじゃないのか!? 少年の発言に、ショウは大きく目を瞠る。 「じゃあアエレ村の住人は!?」 「……?みんな隣町にいるけど……」 少年は驚くショウたちを不思議そうに見上げた後、「そう言えば・・・・・・」と思い出したかのように話をし出した。 「町長さん来た時、凄い焦ってた感じだったよ。『早くしないと騎士団が来てしまう』って……・もしかしてお兄さんたちが来る予定だったの?」 その言葉に嫌な予感がよぎる。 心臓がバクバクと鳴る中、この村の異変や少年の言葉をまとめるとショウの出した答えは一つだった。 「恐らく魔族が出たというのは嘘だ。このままだとジュリが危ない。俺は先に一人で戻る!」 「ショウ様、単独行動はやめてください!とりあえず団長を呼びましょう」 今すぐにでも一人で帰ってしまいそうなショウを冷静に諭すアーロン。 よく見るとアーロン以外の三人も困った表情をしている。 ー-確かに、魔族・・・・・・デビアスが絶対いないという確証がない以上下手に動くわけにはいかない。 「わかった・・・・・・。ネイサン、ラスティさん達を呼んでくれ」 ショウは拳を力強く握りしめるとぎりぎりと歯を噛んだ。 ー--- 笛を吹いてわずか五分、近くまで来ていたラスティたちはショウたちのいる集落についていた。 魔族を発見したと思ったのだろう、剣を引き抜きながら馬を走らせていたラスティ達はは集落の中央で立ち尽くしているショウたちを見ると眉を顰めた。 「ショウ様、一体何がありました?・・・・・・その少年は?」 「ラスティさん、それが・・・・・・」 ショウはこの集落での出来事、少年の発言全てを話した。 おそらく側近の誰かがショウとジュリを離すため仕組んだ罠だという事も。 しかし、その話全てを聞いてもラスティの判断は「このまま調査する」というものだった。 「ショウ様の気持ちもわかりますが、『魔族がいなかった』という報告をするにはまだ調査が足りません。少なくとも今夜はここで調査を続けるというのが団長としての判断です」 「っ・・・・・・!わかった。調査が終わり次第俺は王宮に帰る。一人でもだ」 ラスティを睨みつけるように言うとショウは剣を握りしめ速足で馬の元へ向かった。 陽が沈み星が空に輝く。 あれから少年を隣町まで送り届ける任務に当たったアーロンとネイサン以外は再びアエレ村の調査を行った。 森の中、集落、田畑の溝まで調べつくしたが結局なんの痕跡も見つけることは出来なかった。 「ショウ様、少しいいですか?」 仮眠を取るためのテントを立てていると、ラスティがこっそりと小声でショウに話しかけた。 「先ほど、アーロンとネイサンが戻ってきました。……どうやらアエレ村の住人は仮設の住宅にいたようでした」 「やはり、あの少年の言った通りだったんだな」 「ショウ様の仰るとおりかもしれません・・・・・・。明日私たちは隣町に行って町長に話を聞いてきます。ショウ様は早朝にでもネイサンを連れて王宮にお戻りください」 「わかった・・・・・・」 ようやく王宮に帰れる目処がつき、ショウは安心したように一つ息を吐いた。 ー--- 「ここら辺は巡回で来たことがあるんで俺が先導します!ショウ様ついてきてくださいね!」 翌朝、ショウとネイサンは全速力で森を駆け抜けていた。 先頭はネイサン。行きとは打って変わり馬の体力ぎりぎりで飛ばす。 二人がアエレ村を出て2日半。 休憩に立ち寄った小川でショウは革でできた水筒に川の水を入れていた。 ほぼ一日中走っていたせいか馬は疲れて木の根元でぐったりと休んでいる。 ー-馬の体力が戻り次第、出発したら着くのは明け方になるか。 水筒に入れた水をぐいと飲み干し空を見上げていると、川で顔を洗っていたネイサンが手ぬぐいで顔を拭きながらショウに話しかけた。 「ラスティさん達はどうだったんでしょうね」 「さあな。ただ確実なことは魔族が出た事が嘘で、それは俺とジュリを離すためだって事だ」 「……じゃあ、急いで戻らないと」 ネイサンはポンとショウの肩に手を置くと優しく微笑んだ。 王宮はもうすぐそこ。ショウは大きく頷いた。

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