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第69話弟①
ショウの手を掴み、引っ張るように部屋を出る。そのままキッチンの脇を足早に通りジュリや弟たちが暮らす二階へと進んだ。途中、ショウにどこに行くんだ?、と不審がられたが、気分が乗っているジュリは幸せそうにふふっと笑ったきり答えなかった。
「ここが、僕が貸してもらってる部屋。そして、向かいの部屋が弟たちが住んでる部屋。あのね、会わせたい人って……弟たちなんだ。ケイはまだ体調悪いと思うけど、ジュンには会ってほしいんだ。……ダメかな?」
ショウの手を両手でぎゅっと握り上目遣いで見つめる。
ただでさえ大きな紫の瞳が太陽の光があたりキラキラと輝く。
「ダメなわけないだろう!でも、病気の子が寝ている部屋だ。いきなり知らない人間が部屋に入るのは良くないだろう」
「あっそれなら大丈夫。僕だけ先に部屋に入って様子を見てくるよ。ジュンだけここに連れてこようかなって、」
そう言いながらドアノブに手を置く。その瞬間、ジュリがドアノブを回すより先に部屋のドアが開いた。
「ねえ、さっきから廊下で何話してんだよ?……うるさいんだけど」
そこには寝間着姿のケイが頭を掻きながら立っていた。起きたばかりなのか眠そうに何度も目を瞬きさせている。
「ケイ!!もう起きて大丈夫なの!?」
「うん。一晩ぐっすり寝たら熱下がったし、もう大丈夫だよ。ところで……隣の人、誰?」
ケイは突然現れた大きな男に動揺し、眉間に皺をぐっと寄せながらショウの顔をまじまじと見つめた。
その表情を見たショウはケイの前に進み出るとその大きな体を曲げ頭をさげた。
「こんにちは。俺はジュリの婚約者のショウ・ミヤウチです。体調良くなってよかった。少し話したいんだがいいか?」
「婚約者……?ショウ……?ってあんたもしかして、勇者かよ!」
思っていたより大きく出たその声は二階中に広がり、ジュリは慌ててケイの口を両手で塞いだ。
「ケイ、声大きい!……とりあえず、中入れる?ジュンにも話したいんだけど」
口を塞がれたままのケイは、ジュリの慌てぶりに驚きながら何度も頷いた。
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