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第18話

 とてつもなく甘く感じる光彦の唇が触れてくる。ついばむようなキスを繰り返した後、角度を変えて深く口付ける。  差し込まれる柔らかい舌は何か未知の生き物のように滑らかに動き、颯太の未熟な性感を刺激する。捉えようとしても逃げられるのを、なんとか捕まえ吸い上げると、腕の中のか細い体が少しだけすくんだ。  これまで付き合ってきた女の子としてきたキスなんか、キスのうちに入らないのだと初めて知った。口付けだけでこんなに感じてしまうのは光彦が巧みだからというより、きっとこれほどまでに好きな相手だからだ。  何度も重なり合っては離れ、濡れた唇から微かな吐息を漏らす光彦にいつにない色香を感じ、背筋がゾクゾクしてきた。 「みっちゃん、俺ヤバイ……」 「うん?」 「なんか、速攻暴発しちゃいそうなんですけど」  ムードもへったくれもないことを口走ってしまいすぐ後悔したが、光彦はいつものようにアハハと笑うと、颯太のTシャツを優雅な指でたくし上げる。 「さて、ヌードショーに出られる体かどうか僕が審査してあげよう」 「えっ、ちょ、ちょっと待って……」  手際よくシャツを脱がされ、ベルトに手をかけられてさすがに焦る。中が完全に臨戦体制に入っているのを、間近で見られるのはやはり恥ずかしい。 「こら、そんなんじゃ採用してもらえないよ」  押し留める手をのけて、光彦はジーンズを下着ごと下ろしにかかる。完全に屹立した颯太自身が、愛しい人の眼前に晒される。 「わぁ、おっきい」  素で感嘆の声を上げられてしまった。褒められた気がしなくて、思わず首を縮める。 「ご、ごめん」  思わずこぼれてしまった謝罪に、光彦はちょっと意地悪くニコニコする。 「あれ? どうして謝ったのかな?」 「えっ? や、それは、だってみっちゃんがっ……」 「僕が?」 「み、みっちゃんが、つらい思いするかもって……」 「挿れるときに?」 「う、うん……あ! あなたが嫌ならもちろん別に俺はっ! いやもうなんか、身のほど知らずですいません、ホントに!」  うろたえまくり言い訳する颯太を怒りも笑いもせず、光彦は潤んだ瞳でじっとみつめる。 「本当に、してくれるの?」 「え?」 「僕は汚いよ。知ってるだろ? もう何人もの男を咥え込んで……」 「汚くなんかねぇよ!」  本気で怒った。光彦はビクリと肩を震わせ、颯太から視線を逸らす。いつものような余裕がなくどこか怯えているその表情を見て、本当は彼がずっとそのことを気にしていたのだと、はっきりと理解した。  颯太は一瞬身を引いた光彦をなだめるように抱き寄せ、その背を優しく撫でる。 「ごめんね、怒鳴ったりして。でもそんなこと言っちゃだめだ。俺、ずっと言ってたじゃない。みっちゃんは全然汚くなんかない。誰よりも綺麗だって」 「颯太……でも……」 「でもじゃないの。お預けはもうたくさんだよ。俺はあなたが欲しい。全部欲しいよ。お願いだからちょうだい。今すぐ俺のものになって」  光彦は心なしか頬を染め、戸惑ったように俯いた。見慣れない表情がいちいち愛しい。 「なんで僕、今さらこんな気持ちになるのかなぁ。ちょっと、我ながら嘘みたいだ」  一人ごちながら、股間に伸ばされる白い指。 「え、み、みっちゃん?」 「じっとして。してあげたいから。ただでしてあげたいなんて思うの、君だけだからね」 「ちょ、ちょっと」  うろたえる颯太を無視して、光彦は猛る中心に顔を伏せ唇を寄せる。 「っ……」  薔薇の花びらみたいな紅い唇が先端に近付き触れただけで、電撃みたいな刺激が全身に走った。とてもその小さな口には収まらないと思える颯太のものを、光彦は何のためらいもなく含む。 「だ、ダメだよ、みっちゃん、無理しないで」  脳がショートしそうな刺激を必死で抑え、手を伸ばしその柔らかい髪を撫でどけようとするが、光彦は颯太のものを含んだままちょっと上目遣いに睨んで首を横に振った。  細い指は巧みに動いて、茎の部分を擦り上げる。舌は蜜口をくすぐるように刺激し、先端全体を唇で吸い上げる。 「ん……あっ」  思わず声が出た。口でなんか、これまで誰にもしてもらったことがない。その気持よさは想像以上で、早くも息が上がってくる。  唐突に、『楽園』を覗いたときの森村と光彦との光景が頭をよぎる。あのときは常と変わらず涼しい顔で奉仕をしていた光彦が、今は明らかに白い頬を上気させうっとりと目を潤ませて、自分のものを丹念に愛してくれている。上から見ているだけでたまらなくなった。 「も、ダメだ、みっちゃん、出るからっ」  相手を汚したくなくて引き離そうとするが、光彦は嫌がって逆に颯太の腰にしがみついてくる。そのまま強く吸い上げられる刺激に颯太は我慢しきれず、大切な人の口の中に欲望を放ってしまう。光彦の真っ白い喉がコクリと上下する様は、申し訳なさよりもむしろ激しい官能を呼び起こす。 「み、みっちゃん、ごめんね」  なんだかまだしたそうに、右手で颯太のくったりしたものを放さず握っている、愛しい人を引き起こした。光彦は官能に潤んだままの瞳で「嬉しい」とつぶやいた。 「な、何言ってんの。つらかったでしょ、そんなちっさな口で」 「君が気持ちよくなってくれて嬉しい。こんな僕でも、してあげられることがあって」  恥ずかしそうに笑う相手に、理性のたががはずれかける。 「じゃあ、もっとしてよ」  引き寄せ強引にキスすると、独特の苦味が口の中に広がった。自分の出したものだと思うと嫌だったが、一度彼の口に入ったものなら構わなかった。 「もっともっと、俺のこと気持ちよくしてよ。そしたら俺も超がんばって、倍返しするから」  離した唇で囁くと、耳朶がほのかに桃色に染まる。 「ねぇ、まずはあなたも脱いで。俺もみっちゃんの体が見たい。全部俺に見せてよ」

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