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第20話
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一晩中抱き合っていたはずなのに、翌朝目が覚めたときには腕の中の人はいなくなっていた。
それからずっともう2ヶ月、いなくなったままでいる。
大学には自主退学届が郵送されたらしいと、情報屋の加藤が教えてくれた。狭い家の中がやけにガランとして見えたのも、おそらくもう荷物をどこかに送ってしまった後だったからなのだろう。
主がいなくなると同時にクールさも消え、ただボロいだけに戻ってしまったプレハブで、颯太は何日も何日も待った。昼間は大学をサボりまくって、探しに探した。しかし、光彦の行方は杳として知れなかった。
『丸取りするよ』と言っていたのに、颯太の渡したブタ貯金箱はそのまま置いていかれた。貯金箱と一緒に、颯太自身も、友達の黒猫も、見事に置いていかれた。友達の黒猫はどうやら新たなご主人をみつけたらしくそのうち姿を見せなくなったが、颯太にとっては遠野光彦が最初で最後のご主人様なのだ。置いていかれればただの捨て犬、行く所はない。
何もない部屋の真ん中にボーッと脱力して座ったまま、膝の上の貯金箱と向かい合う。一度光彦に進呈したものだから、手をつけるわけにはいかないのはわかっていた。
「でも今は非常事態だ。おまえだってそう思うだろ?」
ブタ嬢に話しかける。彼女は丸い目をキョトンと見開いて、まっすぐ颯太を見上げてくる。
「だから、俺は今からおまえを開ける。いいよな?」
つぶらな目を輝かせて、いいわよ、と答えてくれた気がした。長い付き合いの相棒は、颯太の完全な理解者だった。
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