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同窓会2

side 蒼牙 『駅前の『あさひ』って店。直ぐに帰れるから迎えは要らないよ。じゃあな、また後で。』 「え、ちょっと、」 言葉を言い終わらないうちに電話を切られてしまう。 むなしく響く回線の切れた音に、手の中のスマホを見つめた。 あの声の調子ならそれほど酔っている様子は無かったから...うん、大丈夫。 迎えは要らないって言ってるのに、あんまりしつこくしても嫌がるかもしれないし。 悠さんだって子供じゃないんだから...。 無理矢理自分を納得させ、ソファに転ぶ。 同窓会を楽しんでいるのだから俺が水を指す訳にもいかない。 そう頭では理解しているものの、心配なものは心配で。 ...これから一人で電車に乗って帰ってくるのか。 冷たい空気に震えながら? ほんのりと酔った表情で? 僅かにアルコールの混ざった熱い息を吐きながら? ...... ...........冗談じゃない。 考えれば考えるほど心配と独占欲が増す。 微笑んだ悠さんの顔だって他人には見せたくないくらいなのに、色気が増した悠さんなんてもっての他だ。 立ち上がりコートと財布を掴む。 あさひ...行ったことはないけど、駅前なら直ぐに見つかる。 玄関の鍵をかけると、俺は足早に駅へと向かったー。 「『あさひ』...ああ、ここだ。」 悠さんが言っていた店を検索して探しあて、店内に入ろうと扉に手をかける。 ここに来るまでにもしかしたら入れ違いになるんじゃないかと心配したが、何度か電話をかけても悠さんに繋がらなかった。 それはつまり、電話に出られない状態になっていると言うことで。 開くまでもなく、中からは大勢の楽しそうな笑い声と食器の音がしていて、ここに悠さんがいるのかと思うと何となく面白くない気分になる。 「すみません、今日は貸しきりで...」 中に入ると店員さんが申し訳なさそうに声を掛けてくる。 「いえ、迎えに来ただけなんで。...ああ、いた。」 ニッコリと笑ってそう言えば、顔を赤らめて「そうですか、どうぞ。」と案内してくれる。 カウンターに座敷、椅子席。 全ての席が埋まっている中で、一際女性の声が響く一角がある。 その中心に大切な恋人の姿を認め、思わず眉間にシワが寄る。 やっぱり...捕まってる。 周りには綺麗に着飾った女性。 酔っているのだろう彼女達の猛攻に困り果てている様子の悠さん。 迎えに来て正解。 あの調子だとまだ帰れなかったに違いない。 ツカツカと悠さん達のテーブルに向かう。 「誰だ?あれ。」と他のテーブルから囁く声が聞こえてくるがそれらは一切無視して真っ直ぐに歩いていけば、高い声が耳に届いた。 「もー、根岸ちゃんは沢山話したんだろうけど、私たちはまだなんだから~!だから、はい!飲んで篠崎くん。」 悠さんの前に純度の高そうなウィスキーが差し出されているのが見えて、一瞬焦る。 ウィスキーなんて悠さんが一番弱い酒じゃないか。 疲れたようにタメ息を吐く悠さんの姿。 嬉しそうに酒を勧める女性達。 それらの光景に若干の苛立ちを覚えた。 ほんと...いい加減にしてくれないかな。 恋人を独占されていることへの苛立ちなのか、それとも悠さんを困らせていることへの腹立たしさなのか。 どちらにしても気分の良いものではなかった。 「悪いけど、」 「俺が代わりに貰いますね。」 断ろうとした悠さんの言葉を遮り声をかける。 一瞬で黙った女性達には目もくれず少し体を屈めてグラスに手を伸ばすと、悠さんの香りがぐっと近付いた。 「え...」 振り向いた恋人の目が大きく開かれるのを見つめ、苛立ちを隠すように微笑んで見せる。 そうしてそのままグラスに口を付けると、俺は一気にそれを飲み干したー。

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