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同窓会3

俺達のいる周りだけやけに静かになる。 注目を浴びている中、グラスを傾けウィスキーを流し込む。 カラン.... 満たすものが無くなった氷が音をたてる。 空になったそれをテーブルに戻せば、悠さんがゆっくりと口を開いた。 「お前、そんな一気に...大丈夫か?」 グラスを手に取りながら呟くそのセリフに、思わず吹き出してしまった。 「フッ、はははは!そこですか。」 どうして俺がここにいるのかとか、迎えに来なくて良いって言ったのにとか...他にも言葉はあるはずなのに。 そんな中で、俺を心配する言葉を選ぶこの人が堪らなく愛しい。 「平気ですよ。俺が酔わないの知ってるでしょう?」 微笑みかけながらそう言えば「そうなんだが...」と悠さんも笑った。 俺が唯一酔うのは悠さんの血だけだ。 今だってアルコールで温まった悠さんの身体からは極上の香りが漂ってくる。 許されるのならば、今すぐここでその柔らかい首筋に牙を立てたいほどに魅力的な香り。 いつだって、俺を酔わせることができるのはこの人しかいない。 「...悠さんじっとして。」 「ん?ああ...」 悠さんの少し長めのサイドの髪が僅かに乱れて落ちている。 そんなところも色っぽく見えて指を伸ばす。 ことさらゆっくりと耳にかけるように撫で付けると、周囲から息を飲む音が聞こえてきた。 牽制する訳ではないが、このくらいの見せ付けはさせて欲しい。 ずっと、この人を独占させてあげたのだから。 「あの、悠くん...そちらは?」 おずおず...と言った口調で、悠さんの向かいに座っていた女性が話しかけてくる。 「ああ、急にすみません。悠さんの同居人で秋山と申します。」 丁寧に自己紹介すればその女性は「はじめまして。根岸です。」と微笑んだ。 他の女性と違って彼女は酔っていないのか「へぇ...悠くん、この人と暮らしてるんだ。」と意味深に悠さんを見つめた。 「っ、、悪い、みんな。迎えに来てくれたから帰るよ。」 女性の言葉から逃げるように、悠さんが立ち上がる。 耳まで赤いところを見ると相当照れているらしい。 「ええ、帰っちゃうの~?」 悠さんの言葉でハッとしたのか、途端に賑やかになった女性達の中で『根岸さん』だけがニコニコと笑っている。 「りょーかい。会計は私が立て替えとくから良いよ。また連絡するから、その時に返して。」 ヒラヒラと手を振るその様子に「ありがとう、根岸さん。」と悠さんが微笑む。 「行こう、蒼牙。」 「はい。では、失礼します。」 コートを手に取ると、悠さんは俺の肩を軽く叩いて出口に向かう。 俺も女性達に会釈をするとその後を追った。 「篠崎またな~!」 その場にいた悠さんの同級生達が大きな声で挨拶をしてくるのに、「またな。あんまり飲みすぎて倒れるなよ!」と嬉しそうに返事をする悠さんが新鮮で。 昔の友人達と過ごす時間が楽しかったのだと安心する気持ちの一方で、少し羨ましくも感じたー。 駅までの道を二人で並んで歩く。 吐き出した息が白く漂うのを見つめながら、行き交う人から悠さんを隠すように歩いた。 「蒼牙、こっち。」 「はい?...っ、」 名前を呼ばれ返事をすれば、急に腕を引っ張られる。 連れていかれたのは人影のない狭い路地裏。 そのままビルの壁に押し付けられると、悠さんの柔らかな唇が俺のそれに重なった。 「っ、悠さん...」 唇を触れ合わせたまま名前を呼ぶ。 条件反射のようにその細い腰に腕を回し抱き寄せれば、悠さんの唇が僅かに開かれた。 チュッ...チュク... すぐさま舌を差し込み熱く濡れた悠さんの舌を絡めとる。 まるでひとつの生き物のように蠢くそれを柔らかく噛めば「ん...」と悠さんの喉が鳴った。 チュッ... 深い口付けから解放しゆっくりと唇を離せば、暗がりでも分かるくらいに妖艶に悠さんが微笑んだ。 「機嫌...直ったか?」 「え、、」 大きくも細い指先が俺の頬を撫でる。 言われたセリフに思わず言葉を詰まらせれば、悠さんはニッと笑った。 「迎えに来てくれたとき、お前少し機嫌悪かっただろ。」 「なんで、それ。」 隠していたつもりだったことを言い当てられて、知らずと顔が赤くなる。 腰を抱いていた腕に力を込め悠さんの肩口に顔を隠せば、暖かい両手が背中に回された。 「分かるよ、お前のことなら。どれだけ一緒にいると思ってる。」 クスクスと笑いながら背中をポンポンッと叩かれる。 まるで子どもをあやすかのようなその動作に、ますます顔が上げられなくなった。 「ありがとな、迎えに来てくれて。」 「うー...でも俺、ほんとカッコ悪い...」 ギュウギュウと抱き締めながら呟けば、「そうだな。」と後ろ髪をグイッと引っ張られた。 「痛い痛い....!んっ....」 チュ... 文句を言おうとした口を、また塞がれる。 「...けど、カッコ悪いお前も嫌いじゃない。」 「!!....悠さんズルいです。」 触れるだけで終わったキス。 瞳を見つめながら告げられた言葉に、俺はもう一度顔を隠す羽目になったー。

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