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看病4
「ナオのことよろしくね、内藤くん。二人とも本当にありがとう。助かったよ。」
「おー、任せとけって。悠さんお大事にな。」
「じゃあね蒼牙。何かあったらいつでも連絡して。」
靴を履く二人を見送る。
こんな時間に追い返すようで申し訳ないが、悠さんのことを思うと帰ってもらった方が良いように思えた。
「あ、そうだ。言い忘れてた。」
「ん?」
出ていこうとした内藤くんが振り返り声を掛けてくる。
「キッチンに食べられそうなもん置いてあるけど、冷蔵庫の中にスポーツドリンクと桃缶も入れてあるから。悠さんが大丈夫そうなら出したげて。」
「分かった。ありがとうね。」
「じゃーな。明日は俺が代わるから、悠さんの側に居てやれな。」
「ん、助かる。このお礼はまた今度。」
「気にすんなって。...お待たせ、ナオちゃん。」
そう言ってニカッと笑って手を上げると、内藤くんは玄関を出ていった。
普段はボケボケしてるけどこういう時には頼りになる。良い友人をもったと、心の中でもう一度お礼を言った。
「.....二人、帰ったのか?」
寝室を覗くと体を起こした悠さんが頭を押さえていて。
辛そうなその様子に苦笑してしまう。
「はい。....起きてて平気ですか?」
ベッドに腰掛け顔を覗き込む。
僅かに息が荒いところをみると、まだかなり熱が高いのだと思えた。
「ん...昼からずっと寝てるから...少し起きたい。」
そう言うと悠さんはベッドから立ち上がろうとする。力なくよろめくその体に腕を回し支えれば、「悪い...」と小さな声が聞こえた。
「掴まってて下さいね。」
「っ、ん...別に歩けるのに」
抱き上げリビングへと向かう。
甘えるように体を預け、クスクスと笑うのが可愛い。
「寒くないですか?」
ソファにソッと降ろし毛布を肩に掛けながら尋ねれば「平気だ、ありがとう。」と笑った。
ソファに凭れかかり瞳を閉じる姿からは、さっき見せた寂しそうな様子はもう感じられない。
良かった、と内心ホッとしながら首筋に手を伸ばした。
「.....まだかなり高いですね。何か食べられそうですか?お粥、ナオが作ってくれてますけど。」
「ん....そう、だな。....冷たいもの何かあるか?」
「桃缶を買ってきてくれてますよ。食べますか?」
「ありがとう、もらう....」
フニャッと笑う悠さんに「少し待っててくださいね。」と告げ、キッチンへと向かう。
冷蔵庫を開ければ目立つところに桃缶が冷やしてありそれを取り出した。
あまり沢山は食べられないだろうと一切れだけ出すと、一口サイズに切り分け皿に盛る。
キッチンに甘い香りが広がる。
滅多に桃缶なんて買わないな、など考えながらこれをチョイスしてくれた内藤くんに感謝した。
「悠さん...どうぞ。」
ソファに戻ればダルそうにクッションを枕に横になっていて。
机に皿を置き、優しく抱き起こせば「んー。」と返事をしてきた。
「はい、口開けて。」
「ん...」
フォークに桃を刺し口許に運ぶ。
普段なら「自分で食べる。」と怒るだろうに、素直に口を開けるその様子に思わず笑みが溢れた。
「......うまい」
ゆっくりと咀嚼し飲み込むと、また口を開ける。
そこに桃を差し出せばパクリとフォークを口に含む。
.....どうしよう。めっちゃ可愛い。
熱で顔を赤くさせトロンとした瞳で大人しく桃を食べる姿に、ドキドキと心臓が鳴っている。
そうして皿にあった桃を全て食べると「ごちそうさま。美味しかった...」とフワリと笑った。
「まだ冷蔵庫にありますから...食べたくなったら言って下さいね。」
「ん...なぁ、蒼牙。」
「なんですか?」
「......寒い」
「....っ!」
そう言うと悠さんは体を動かし、あろうことか俺の膝に乗っかってきた。
向かい合う形で抱きついてくるその体はいつも以上に熱い。
ずり落ちていた毛布に手を伸ばし、悠さんを包むように掛けると優しく抱き締めた。
「暖かいな...」
そう言って首筋にスリッとすり寄ってくるから...
何なの、俺をどうする気なの、殺す気ですか...!?
力を抜いて身体を預けてくる悠さん。
あまりにも可愛く甘えられて口の端が上がってしまう。
高熱が出て正常な判断が出来ていないのだとしても、この状況は嬉しすぎる。
「ごめんなさい。俺すげーラッキーかも。」
「...バカだろ、お前。」
耳にチュッ...とキスを落とし囁けば、小さく笑う声が聞こえてきた。
「なぁ、もう一つワガママ良いか...?」
「ん?なんですか?」
顔を上げることなく、ボソボソと呟く悠さん。
優しく耳元に囁けばフゥッ...と息を吐き出すのが分かった。
「背中...撫でてほしい...」
「...ワガママですか?それ。」
「ん...」
こんなこと...ワガママでも何でも無いんだけどなぁ。
ゆっくりと背中を擦りながら笑いがクスクスと溢れた。
気持ち良いのか、安心したように抱きついてくる背中を何度も撫でる。
「.............」
やがて小さな寝息が聞こえてくるまで、俺はそのままの姿勢でいたー。
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