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不快2
side 蒼牙
「秋山くんお疲れ~。」
仕事が終わりホテルの裏口から出たところで呼び止められた。
うんざりとした気分で振り向けば、そこにはニッコリと微笑んだ美波さんが立っていて。
誰もが振り向くであろうその容姿に眉を寄せた。
「待ってたんだよ。一緒に食事でも行かない?」
「行きません。用事あるから失礼します。」
昼にも不本意ながら一緒に出ることになったのだから。
これ以上この人に関わりたくはない。
会釈をして立ち去ろうとすれば、グッと腕を掴まれた。
「えー、冷たいなぁ。用事ってすぐに終わらないの?明日休みだし遊ぼうよ。」
見つめてくるどこか媚びたような瞳。
意味深に絡んでくる腕。
そして『遊ぼう』という言葉の意味。
そのどれもが俺を苛立たせる。
「...離せよ。勝手に遊びに行けばいいだろ、俺は行かない。」
絡んできた細い腕を振りほどき冷たく言い放てば、クスクスと笑い声が聞こえた。
「それ、その口調。そっちのが君らしいよ。」
「.........」
「でもそんなに嫌わなくても良いのに、傷つくな。」
手を胸にあてながら俺を見上げてくるその顔はひどく楽しそうで。
何を考えているのか分からない表情に苛立ちが大きくなる。
「睨んでくる顔も好みだなぁ...って、電話、鳴ってるよ。気にせず出たら。」
「あんたには関係ない。」
「...ふーん…」
振動を続けるポケット。
やがて反応が無くなったそれに心の中で謝る。
今この人の前で悠さんからの電話を受ける訳にはいかない。
だから...ごめんなさい。
「...じゃ、行くから。」
ため息と共に告げ、これ以上話すつもりはないと背中を向けた。
こんなところで足止め食らって悠さんを待たせるとか…あり得ない。
「じゃーね、また誘うから。」
気にした風もなく言われたセリフに内心で舌打ちした。
...誰が行くものか。
出会って間もない相手に、これほどの不快感を感じるのは初めてのことで。
こんな姿、悠さんには見せたくない...そう思った。
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