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出会い3

side 清司 仕事の取引相手から勧められた店で相席になった向かいの男。 サラリーマンの格好したソイツは「俺はいつもハンバーグか豚カツです。」と二ッと笑った。 初対面でも気さくに話しかけてくるソイツからは、ひどく魅力的な香りがした。 俺よりは若いな。スラリとした肢体にスーツ、サイドを撫で付けるようにセットした髪は真っ黒で柔らかそうだ。 整った顔立ちをしているが話しやすい雰囲気を纏っているし…何より色気がある。 久しぶりに良い獲物を見つけた気分だ。 『篠崎悠』と名乗ったこの男をどうやっていただこうか…。 「…悠くん、いい匂いだね。」 その身体から香る血の匂いに、つい本音が洩れた。 「でしょ。豚カツも絶品ですよ。」 俺の言葉の意味を理解していない彼は、そう返事をしたまま箸を取ろうとしない。 先に食べずに待とうとするその心遣いに好感を抱いた。 「食べてね。」と勧めてみるが、「えぇ。」と返事はしたものの食べようとしない。 …いいな、コイツ欲しくなってきた。 目の前でネクタイを弛める仕草が色っぽくて、吸血鬼として欲しいのか、男として欲しいのかよく解らなくなる。 弛んだ襟元から覗く首筋に視線を向けた。 …喰らいつきたい。 白い肌を見てそんなことを考えていると、僅かに見えるキスマークに気付いた。 恋人もちか…そう思うのと同時にイラッとした感情が襲う。 …何だこれ。 自分の感情がよく解らなくて困惑していると、料理が運ばれて来た。 気を紛らわすように、ハンバーグを食べる。 お勧めと言うだけあって、確かに美味い。 …でもそれよりも目の前の男の仕草や話し方、笑顔が気になっていた。 「明日さ、悠くん暇?」 店を出て、去ろうとする彼を引き留める。 「明日ですか?」 「うん。良かったらメシ食いに行こうよ。定食じゃないヤツ。」 明日は午後からは時間があるはずだ。 蒼牙の仕事している姿を見てきて欲しいと頼まれているし、ちょうど良いから彼を連れて行こうと思った。 「ありがとうございます。…でもすみません。明日はちょっと用事で。」 そう言って彼は少しはにかんだような表情を一瞬見せる。 …恋人か。 そう察知して、またイラッとした気持ちが沸き上がる。 「そっか、残念。じゃあ連絡先教えてよ。また一緒にメシ食いたいし。」 なら、アンタの気持ちを俺に向けさせてやるよ。 そう心で呟いたー。

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