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伝言

side 蒼牙 仕事が終わり、重い気持ちで帰宅する。今日は叔父が来る日で、近くのファミレスで待ち合わせをしていた。 にこやかに対応してくる店員に連れがいることを告げ、店内を見回す。 …いた。 店の奥、禁煙コーナーに叔父は座っていた。携帯をいじっていて、まだこちらに気付いていないようだ。 「…どうも、お久しぶりです。」 側まで近づき声を掛ける。「久しぶり、座れよ。何か食べるだろ?」 向かいの席を指差され、大人しく座った。 「お前が来てから俺も食おうと思って。ほら、早く決めろよ。」 メニューを差し出してくる叔父に少し驚いた。 マイペースなこの人が、俺を待ってまだ食べていないということに。 「すみません。じゃあ…」 適当に注文をして、叔父に向き直る。 今日はすこぶる機嫌が良いようで、ニコニコと俺を見てくる。 「…何ですか?叔父さん」 居心地が悪くそう言うと、わざとらしく眉をしかめて見せた。 「『叔父さん』は止めてくれない?俺、まだ若いんだから。昔みたいに『セージ兄ちゃん』って呼んでよ。」 からかうような口調に多少のイラつきを感じるのは許してほしい。 「…わかりました、清司さん。」 名前を呼ぶと納得したのか、また携帯を操作し始める。 鼻歌でも歌い出しかねない様子に、「ご機嫌ですね」と溢した。 「そう見える?…実は今日、スゲー美味しそうなヤツ見付けてさ。今も口説きのメール送ってんだよ。」 …またか。 この人が誘って靡かなかった人間を俺は知らない。 相手を『餌』としか見ていないこの人が、目的を果たした後にどれだけ冷たいかも知っている。 今回ターゲットになった人が気の毒で、溜め息が溢れた。 「…よし。」 送信し終わったのか携帯をしまうと、清司さんはこちらに向き直りいろいろと話し始めた。 元気にしてるのか。 仕事はどうだ。 困っていることはないのか。 などなど。 全てに当たり障りない返事をしながら、料理を食べる。 「…ま、こんだけ聞けば姉さん達も納得するかな。」 一通り質問すると清司さんは苦笑した。 「たまには実家に帰ってやりな。姉さん達もお前に会いたいんだから。」 「…別に避けてる訳じゃないですよ。タイミングを逃しただけで。」 これには俺も素直に答えた。 家族に心配を掛けていたことに反省し、「今度帰ると伝えて下さい。」と頭を下げると「了解。」と笑う声がしたー。

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