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宣戦布告

清司さんが目を付けた相手が悠さんだった。 その事実に耳鳴りがする。 どうしたら良いんだろう。 このままだと、確実にこの人は悠さんにコンタクトを取り続ける。 悠さんが奪われるかもしれない…という心配は、実はあまりしていない。 自惚れかもしれないが、それでもそんな浮わついた気持ちで付き合ってなんかないから。 それよりも、清司さんが悠さんに何かするんじゃないかと心配になる。 悠さんは男だから大丈夫だなんて思えない。 俺達吸血鬼は人間よりも力が強い。 もし清司さんが力ずくで迫れば、無事では済まない。 俺が側にいれば守れる。けど、俺がいないときだったら…。 自分の欲しいものは、どんな手段を使ってでも手に入れる。 …この人はそういう人だと俺は知っている。 最悪の想像をしてしまい身震いする。 このままじゃ駄目だ。 とりあえず、ちゃんと話し合わないと。 ファミレスを出てからアパートに帰るまでの間、そう決心した。 「…清司さん、大切な話があります。」 アパートに帰り、風呂から上がってきた清司さんにそう声を掛けた。 「なんだ?やけに真剣だな。」 勝手に冷蔵庫からミネラルウォーターを出し、蓋を開けながら清司さんは座った。 「今日、清司さんが知り合った『悠くん』についてです。」 予想外な話題だったのか、清司さんがピクッと眉を上げるのが分かった。 「…悠くんが何?」 ペットボトルを置くと清司さんは俺に向き直り見つめてきた。 「…単刀直入に言います。俺が付き合っているのは、その『篠崎悠』さんです。」 「…!!」 清司さんが息を飲む。 目を大きく開き、俺を凝視してくる。 俺も目を逸らさず見つめ返した。 ここで目を逸らしたら、負けてしまう…そんな気がした。 どのくらいそうしていたのか、先に声を発したのは清司さんだった。 「……お前か。」 ボソッと清司さんが呟く。 その声は、今まで聞いたことがないような低い声だった。 「あのキスマークは、お前が付けたものか。」 「え、…!!?」 …ダンッ!! 小さな声で言われた言葉を聞き返そうとした、その一瞬の隙。 俺は清司さんに胸ぐらを掴まれ壁に押し付けられていたー。

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