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隣客の受難
…疲れた。
こんな時間まで接待ってどうよ…。
腕時計を確認すると12時を回っていて、やっと帰ってきたビジネスホテルの部屋の鍵を開けた。
『…ン、アァッ…ンッ!』
扉を開けようとした手がピタリと止まる。
『アンッ…!あ、フッ…ッ…』
おいおい、アダルトビデオならイヤホンしろよ。
隣の部屋から聞こえる喘ぎ声に苦笑する。
こっちは仕事からやっと帰ってきたってのに…。
しかし、こんな外まで聞こえるような音量で見るかね。
『アァッ…アッ…!』
…ん?
……違う!
これ、テレビじゃなく生の声じゃねーか!
『…ン、…してる』
男の声は小さく聞こえにくいが、激しく攻めているらしいことは女の声で分かる。
甘く、泣いたような喘ぎ声。
…やべー、腰にクル。
俺は部屋に入るのも忘れて、隣の部屋から聞こえる情事に耳をたてた。
『あぁぁ…ッ…も、イクッ…!』
…え、ちょっと待って。
女じゃなくね?
これ、男の声だろ!
なに、男同士のガチセックス?
うわぁ、初めて聞いたよ。
…スゲー。
この男めちゃめちゃ色っぽい声出すな。
男って分かっても下半身に熱が集まるっつーの。
『アッ…!あぁ…そ、が!』
下を見ると硬く育ちつつある息子の姿。
…はぁ。隣は盛り上がってるけど、俺は自分で慰めるしかない。
俺は一頻り聞き耳を立てた後、溜め息を吐き部屋に入った。
〈翌朝〉
…眠い。
昨日は隣がまだ盛り上がってるのかとか、どんなヤツらなのかとか、そんなことばかり考えてしまってよく眠れなかった。さっさとメシ食って帰ろう。
そう考えながら部屋を出ると…出くわしてしまった、隣の客に。
身長の高いモデル並みのイケメンと、スーツ姿の男前。
嫌でも昨夜の声を思い出してしまう。
どっちだ、あの声は…って、多分確実にスーツの男だろうな。
だって男にこんなこと言うのはおかしいかもしれないけど、この人むっちゃ色っぽい!
どう見ても男なのに、醸し出す雰囲気が人を引き寄せる感じ。
ついガン見してしまい、スーツの男がこっちに気付いた。
咄嗟に目を逸らす。
男は特に気にした様子もない。
…が、今度はイケメンが近付いてきた。
くっそ、身長高い上にマジでイケメンだよ!
めちゃくちゃ綺麗な顔してる。
あわてふためく俺にニッコリと笑うイケメン。
…ヤバい、怖い!
何なの、その笑顔。
男が耳元に口を寄せる。
囁かれた言葉に赤面したー。
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