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修復された関係

side 清司 あの告白からずいぶんと日が経ち、俺は蒼牙の家に度々遊びに来るようになった。 まぁ、仕事にかこつけて悠くんに会いに来ているわけだが、彼には全く隙がなくなり俺と二人だけで会うことはしなくなっていた。 よほど蒼牙に言い含められているのだろう。 もう手を出すつもりはないけど、最近では蒼牙が遠慮なしにものを言うのが面白くて、ついからかい半分でちょっかいを出してしまう。 以前、俺が悠くんにキスをしたことは、あの告白の翌日に殴られたことで許してくれたらしい。 あれはマジで痛かった。 『一発で済んで良かったと思って下さい。』 本気の一発は俺が吸血鬼じゃなかったら病院行きだったろう。 ま、その後で俺も一発殴り返したけどな。 『これで諦めるんだからお前も我慢しろ。』 そう言うと蒼牙も納得したのか黙っていた。 蒼牙の部屋で寛ぎながらそんなことを思い出していると、「清司さん」と声を掛けられた。 「んあ?」 「変な返事…俺もう仕事行きますけど、清司さんは?まだ帰らないんですか?」 身支度を済ませた蒼牙が部屋に顔を覗かせる。 我が甥っ子ながら、ホントに綺麗な顔立ちしてるな。 「というか、帰って下さい。俺、今日は悠さんの家に帰るんで、清司さんがここにいたら気になってゆっくりできません。」 真面目な顔してハッキリと言われ笑いが溢れた。 「え~、じゃあまだ居座ってようかな。」 意地悪く笑いながらそう言うと、あからさまにイヤそうな顔をした蒼牙。 そういう態度や言葉が以前よりも身近に感じられるようになったのは、きっと気のせいではないのだろう。 悠くんとのことは俺にはとっては残念だが、おかげで蒼牙とは良い関係が築けていると思っている。 …だから、ちょっとしたお礼がしたくなった。 「そんなあからさまに嫌な顔するなよ。せっかく、良いものあげようと思ったのに。」 カバンを手繰り寄せながらそう言うと、蒼牙が「良いもの?」と怪訝な顔をした。 「取引先から貰ったんだよ。…ほら。」 取り出したのは、とある旅館の食事券。 以前の俺なら適当に誘って、色々と美味しい思いをさせて貰っていたが…最近はそんな気にもならず綺麗な生活をしていた。 「ここ、有名な旅館じゃないですか。貰って良いの?」 少し驚いたような顔をしながらも、目は輝いている。 俺が頷くと「ありがとう。」と嬉しそうに笑う蒼牙が、何とも可愛かった。

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