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5月19日 朝
side 悠
「…さん、起きて、悠さん。」
身体を軽く揺すられて目が覚めた。
ボンヤリとした意識の中、目の前には蒼牙が笑っていて。
「…ん、はよ。」
「おはようございます。そろそろ起きないと遅れるよ。」
嬉しそうにそう言うと、額に口付けを落とす。
時計を確認すると7時を回っていた。
…7時!?
今日は8時に出る予定で新幹線も予約していた。
「悪い!寝過ごした!」
慌てて飛び起き、ベッドから降りる。
「大丈夫ですよ、そんなに慌てなくても。」
クスクスと笑いながら蒼牙は立ち上がると、「おはようございます。」と改めて挨拶をしてきた。
昨日は有休前だから出来ることはしておこうと、かなり遅くまで仕事をした。
帰って来たらもう11時を回っていて、それから晩飯だの何だので遅くなってしまって…。
蒼牙を見るともう身支度は整っていて、申し訳なくなる。
「ホント、ゴメンな。朝飯はコンビニで…。」
コンビニで買おうと言いかけて、テーブルの上にトーストや目玉焼きなどが並んでいることに気がつく。
「蒼牙、これ…。」
テーブルを指差すと、蒼牙がクスクスと笑いながら俺を軽く押し座らせた。
キッチンからはコーヒーの香りもする。
「はい、食べて下さい。早く食べないと本当に遅れますよ。」
そう言って向かいに座ると「いただきます。」と手を合わせる蒼牙。
「…ありがとう、蒼牙。」
朝から何て幸せなんだろう。
蒼牙が食事を準備してくれるのは初めてではないが、朝食を作ってくれたのは初めてだ。
朝に弱いコイツが、早起きして作ってくれたことが凄く嬉しい。
「うん、美味い。」
素直にそう呟けば、照れたように笑う蒼牙が愛しかった。
「コーヒー入れてきますね。」
「あ、蒼牙」
思い出したようにそう言って立ち上がる蒼牙を、名前を呼んで引き留める。
立ち止まった蒼牙を手招きして呼び寄せると、その腕を引いてギュッと抱き締めた。
「誕生日おめでとう。」
耳元で囁くと「…はい。ありがとうございます。」と本当に嬉しそうな声で強く抱き締め返してくる。
「明日まで、悠さんを独占させて下さいね。」
小さく呟く言葉にクスッと笑い、腕の力を込めて応えたー。
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