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5月19日 大浴場
「広くて綺麗だな。」
夕食前に一度温泉に入っておきたくて浴衣を片手に大浴場に来ていた。
桧の露天風呂は大きく綺麗な庭園を眺めながら寛げるようになっている。
簡単に身体を洗い湯に浸かると大きく溜め息が出る。
内風呂にも同じ考えの客が数人入っていて、首筋にキスマークを付けないように言って良かった…とホッとした。
隣に並んで入っている蒼牙を見ると少し機嫌が悪そうな顔をしていて…正直困っている。
数分前、脱衣場で服を脱いでいると「…悠さん」と声を掛けられた。
「ん?なんだ?」
篭に服を入れながら振り向くと、神妙な顔の蒼牙が立っていて。
「…やっぱり、部屋の風呂に入りませんか?」
突然の提案に「嫌だよ。せっかく来たのに。」と素直に返した。
「急にどうした?」
何でそんな事を言い出すのか分からなくて首を傾げると「だって…」と歯切れの悪い蒼牙。
「…他にもお客さんいるじゃないですか。」
「そうだな。」
「…悠さんの裸、見せたくないです。」
「…お前、馬鹿だろ。」
至極真面目に答える蒼牙に照れるよりも先に呆れた声が出た。
「男同士、何で裸を隠すんだよ。」
「悠さん自覚が無さすぎです。どれだけ自分がエロい身体をしているか、分かってないでしょ。」
真顔で言う蒼牙。
信じられないような言葉を言われて一気に顔が熱くなった。
「な、エロいって何だよ!」
つい大きな声が出てしまい、残りの衣服を脱ごうと服に手を掛けた。
するとフワリと後ろから抱き締められて、身体が硬直した。
「ホント、自覚がないんですね。」
「…ッ…離せよ。」
耳元に囁かれる言葉に身体がゾクっとする。
「嫌です。…自覚が無いなら、自覚させるまでです。」
そう言うと蒼牙は首筋に唇を寄せてきた。
…コイツ!!
「痕を付けたら、今日はもう触れさせないからな!」
咄嗟に叫ぶと軽く触れた唇がピタリと止まった。
「…本気ですか?」
「当たり前だ。せっかく温泉に来たのに入らせないなんて、お前のが本気か?」
ゆっくりと身体を離す蒼牙に心底呆れて言う。
「入らせないなんて言ってません。他人に見せたくないだけです。」
「同じ事だろ。とにかく俺は入りたいの!これ以上邪魔したら、本当にキスもしないからな。」
そう言ってさっさと風呂に入り、後を追ってきた蒼牙がこうして側にいる訳だが。
珍しく不満そうな蒼牙の様子に笑いが溢れたー。
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