119 / 347
5月19日 大浴場2
side 蒼牙
手入れの行き届いた庭園を眺めながらすっかりご満悦の悠さん。
まだ明るい露天風呂で、そのしなやかな身体を晒している。
日に焼けていない白い肌、細い腰、スラリとした手足、…何より綺麗なのは浮き出た肩甲骨から腰にかけてのラインだ。
はっきり言って、かなり色っぽいことに全く気付いていない。
浴室内を歩く時には腰にタオルを巻いているが、逆にその姿がエロい。
さっきから内風呂から露天に出てきた中年のオヤジが悠さんをチラチラと見ている。
…勝手に見てるなよ。減るだろうが。
そう思いを込めて睨み付けてやると、そそくさと中に戻っていった。
全く、こんなに人を惹き付けるクセに本当に自覚がないから困ってしまう。
「蒼牙?」
つい深い溜め息を吐いてしまい、それに気付いた悠さんが心配そうに声を掛けてきた。
「何ですか?」
ニッコリと笑って返すと安心したような表情を見せる。
もしかして、俺が怒ってるとでも思っているのだろうか。
「ん、何でもない。」
そう言ってまた庭を眺めだした悠さんに、少し意地悪をしたくなる。
「…今ここでキスしてくれたら、もう我が儘言いません。」
「なッ…!」
「今なら誰もいませんよ?」
そう言って悠さんの腕を掴み軽く引っ張った。
周りには誰もいないが、大きなガラス窓の向こうには内風呂を堪能する客がいる。
…多分見えてると思うけど。
心の中で呟き悠さんの瞳を覗く。
困ったように揺れる瞳が綺麗で、悠さんからしてくれないのなら俺からしよう…と考えた時。
「…これで機嫌直せよ。」
と囁く声が聞こえた。
ゆっくりと俺に顔を寄せてくる悠さんをじっと見つめる。
唇が触れる寸前に「…目を瞑れよ」と小さく呟いた。
「…嫌です。全部見たい。」
「…クソ、恥ずかしいヤツ。」
…チュッ
軽く触れ合わせるとすぐに離れようとする。
俺は悠さんの後頭部を掴みそのまま深く口付けた。
「…ン、蒼牙」
熱い湯の中、逃げようとする悠さんを捕まえた。
見られたって良い。
むしろこの人は俺のものだと見せ付けてやりたい。
「…大好きです。」
唇を解放し、目を見つめながら囁いた。
「知ってるよ。」
照れたように笑う悠さんにもう一度キスを送る。
ちょうど悠さんからは死角になる位置に驚き固まっている客がいたが、俺が手を振り払うと逃げるように上がっていったー。
ともだちにシェアしよう!