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告白2
side 悠
蒼牙に後ろから抱き締められ安心する。
すっかり冷えた蒼牙の身体が、風呂上がりで火照った体に心地よかった。
だけど、
「…悠さんに大事な話があるんです。」
どこか緊張したような、でも弱々しい声に、一気に身体が冷えていく気がした。
「…何だ?」
平常心を装いながら身体を離そうとしたら、逆に抱き締めていた腕に力を込められてしまい動けなくなる。
「…このままで聞いてください。」
耳元で蒼牙が大きく息をする。
「今から話すことは、からかいでも、嘘でもありません。」
そう前置きをして、蒼牙はゆっくりと話始めた…。
…
…
「信じられないかもしれませんが…本当のことです。俺は人間じゃない。…吸血鬼です。」
思いもよらない話の内容に、頭がついていかない。
コイツが吸血鬼?
頭の中では小説やドラマに出てくるような吸血鬼の姿を想像していた。
どれも当てはまらないじゃないか…。
「悠さんが信じられないのは仕方ないです。…だけどお願いです。…俺を嫌わないで。」
俺が何も言わないからか、蒼牙はそう言って肩口に顔を埋めた。
声が震えている。
もしかして泣いているのか?
そう感じたら、ジッとしていられなくなった。
「離せ、蒼牙。」
思ったよりも強い口調になり、蒼牙の身体がビクッと震えたのが分かった。
違うんだ。
否定したわけじゃない。
「大丈夫だから、蒼牙。この手を離せ。…お前の顔が見たいんだ。」
言い聞かせるようにゆっくりと伝えると、腕の力が緩むのが分かった。
身体を蒼牙から離し向き合う。
俺を見つめる瞳が不安に揺れている。
…良かった、泣いてない。
涙を流していないことに安心する。
切れ長の綺麗な瞳、高い鼻筋に少し薄めの唇。
完成されたこの顔は、吸血鬼だからこその美しさなのか。
ゆっくりと蒼牙の顔に手を伸ばす。
真っ直ぐに瞳を見つめる。
「…お前は人間じゃなく吸血鬼なんだな。」
「…はい。」
「…分かった。」
驚き、未だに信じられないが、蒼牙の瞳が嘘を言っているとは思えなかった。
俺は一度大きく息を吸うと、一番気になったことを口にした。
「…もう一つ。…俺は只の餌か?」
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