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受容
恐い?
誰が、誰を?
もしかしてコイツ…
「…バカだなぁ。」
ため息と共に呟けば、「…え?」と聞き返された。
「恐くなんかないよ。言っただろ、お前が吸血鬼だろうが何だろうが構わない。」
「…。」
「嫌だったら男相手にこんなことさせない。バカにすんなよ。…俺はお前が良いんだ、お前だから許してんだよ。」
捲し立てるように言うと、強く抱き締められた。耳元に吐息がかかる。
「…ありがとう、悠さん。」
また泣きそうな声。
「ホントに手が掛かるな、お前は。」
頭をポンポンと叩く。
仕方ないな、その不安消してやるよ。
「…蒼牙。俺の血、美味そうか?」
頭を撫でながら聞く。すると無言で頷くのが分かった。
「…そうか。じゃあ、飲め。」
「…え?」
俺の言葉に驚いたのか、蒼牙が顔を上げて見つめてくる。
「俺の血、お前にやるよ。…飲め。」
お前が吸血鬼であることを俺に打ち明けて、それが不安になっているのなら…俺はそれを消してやりたい。
吸血鬼だって構わない。お前が俺を欲しているのなら、それに応えてやりたいんだ。
そう気持ちを込めて伝えると、蒼牙が唾を飲むのが分かった。
「……。」
続く沈黙に、蒼牙が葛藤しているのだと感じ「…飲んでくれ。」と促した。
「…本気ですか?」
「当たり前だろ。冗談でこんなこと言うかよ。…あ、でも上手にやれよ。痛いのは嫌いだ。」
最後は笑いながら言うと、蒼牙も笑って返す。
「…善処します。」
蒼牙の唇が俺の首筋に吸い付くのを、俺は目を閉じて感じていたー。
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