36 / 347
葛藤
side 蒼牙
俺が吸血鬼でも何でも良いと言ってくれた。
熱い湯に浸かり、涙を流して少し腫れぼったい瞼を押さえる。
悠さんと同じ香りのシャンプーを使い、まるで貴方に包まれているような気分のまま部屋に戻ると、無防備に寝転がる悠さんがいて。
本当は今すぐにでもその身体を貪りたいけど…だけどあんな話をした後で、どうして貴方に手を出せるだろう。
そう思ってベッド脇に座ると名前を呼ばれた。
強く手を引かれ、気が付くと貴方越しに天井が見えた。
俺の我慢なんか貴方に触れられたら簡単に吹き飛んで、そんな俺を笑って受け入れてくれる。
愛しい、大切な人。
想いが溢れてガッツキそうになる。
貴方の香りが、俺の本能を突き動かす。
だけど首筋に唇を寄せて貴方の香りに目眩がしそうな中、俺は臆病だから…
「恐くないですか?…俺のこと。」
確認せずにはいられなかった。
でもその確認は、改めて貴方の強さと優しさを思い知る結果になって、また涙が出そうになった。
「…ありがとう、悠さん。」
俺も貴方だから良いんです。貴方しかいらないんです。
そう想いを込めた。
『俺の血、お前にやるよ。…飲め。』
驚きに聞き返した言葉はあまりにも魅力的で。
ドクン、ドクン…と心臓が音をたてる。
その後に続けられた言葉は、俺を受け入れてくれた証なんだと悠さんの目が語っていた。
貴方の血を飲む。
そんなこと、許されるのだろうか。
俺の欲望で貴方を汚してしまうんじゃないだろうか。
『飲みたい』でも『飲みたくない』
2つの想いが葛藤する。
でも貴方が許してくれるから、
『…飲んでくれ。』
なんて本当にそれを望んでいるような瞳を向けてくれるから、
…俺は自分の欲望に負けた。
ともだちにシェアしよう!