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忘我(※流血表現有)

「…ッ!」 悠さんが息を飲み声を殺すのが耳に伝わる。 口の中に広がる悠さんの血。 …甘い。 芳醇な香りと甘味が襲いかかり、頭が馬鹿になりそうだ。 一度口を離し首筋を見つめる。 滲み出てくる貴方の血が俺の理性を崩す。 たまらず舌を伸ばし、ゆっくりと舐め上げた。 また口に広がる貴方の味。 このまま喰い尽くしたい。 何もかも奪いたい。 そんな欲求が押し寄せる。 「…痛い?」 吸い付きながら囁くと、 「…だ、いじょぶだけど…ンッ!…何か、変…」 震える声でそう答える貴方が愛しい。 「…最高だね、悠」 自分のものとは思えない甘い声。 貴方に負担が掛からないように細心の注意を払う。 『愛しい人の血は、どんなものよりも自分を虜にするわ。あなたにもいつか分かる日がくるわ。』 母親の言葉が過る。 …あぁ、本当だ。 …俺は夢中になって貴方の首筋に吸い付き続けた。 「……。」 無言になった悠さんに微笑みが漏れた。 …眠っている。 傷口に目を向ける。 血は止まり、濃い内出血だけが残っている。 この人は俺のものだ…所有印にゾクリとする。 「愛してるよ、悠。」 眠っている貴方に口付け囁く。 もう逃してあげることは出来ないから…覚悟して。

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