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余韻

side 悠 …暖かい。 心地よい微睡みの中うっすらと目を開けると、目の前には眠っている綺麗な顔があって。 驚きに一気に目が覚める。 慌てて体を離そうとするが、腰に蒼牙の腕が回されていて上手くいかなかった。 そうだ…確か昨日、コイツに血をやると言って…それからの記憶が曖昧だ。 首筋にビリッとした痛みが走り、熱い唇に覆われた。 痛いはずの行為なのに、蒼牙の唇が触れた途端に身体中に甘い痺れが走った。 ジンジンとそこから熱が広がり…あの時感じていたのは、性的なものとは違う、だけど確かな『快感』だった。 その後をよく覚えてないが、どうやら眠ってしまったらしいな…。 目が蒼牙の唇にいく。この口が昨夜俺の血を飲んだのか…。 どうだったのだろう。 美味かったのだろうか。 …安心できただろうか。 「…ん…おはよう、悠。」 そんなことを考えながら見つめていると、視線を感じたのか蒼牙が軽く身動ぎ目を覚ます。 俺を確認した途端にフワリと微笑み、その笑顔に胸が締め付けられた。 「おはよう。」 一言返すとギュッと抱き締められる。 「身体、ダルくない?」 「え?」 何を言われたのか分からず聞き返すと、顔を覗き込みながら首筋を指でなぞられる。 「昨日、俺夢中になったから。」 「え、あぁ…大丈夫だ」 少し心配そうな顔を見せる蒼牙に微笑むと、首を優しくなぞられ背中にゾクッとしたものが走った。 「…凄く美味しかった。まだ足りないくらい。」 耳元に口を寄せて囁く蒼牙に、「…またな。」と返した。 吐息が耳に掛かる。 『…耳弱いんですね。』と言われたことを思い出す。 …そうかもしれない。 昨夜は未遂に終わったセックス。 違う行為に別の意味での満足感はあったが、蒼牙に触れられればすぐに身体が反応してしまう。 …ダメだ。朝からコイツが欲しくなる。 「…エロい顔。」 クスッと笑われ顔に血が集まる。「うるさい。」と顔を伏せ隠した。 余裕のある態度。 いつもと違う口調。 いつの間にか呼び捨てにされる名前。 …間違いなくスイッチが入ってやがる。 もしかしたらこれが吸血鬼としての蒼牙の顔なのかもしれない。 全くタチが悪い。 こっちの身にもなれ。 …ドキドキとうるさい心臓を押さえながら「早く犬に戻れ。」と呟いた。

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