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5月19日 勘違い

side 蒼牙 腕の中に抱き締めた悠さんが僅かに震えている。 時々「ズッ…」と鼻を啜り声を殺して泣いているのが分かる。 どうして急に泣き出したのか解らなくて気持ちはどんどん焦っていく。 「…悠、顔見せて?」 宥めるように言ってみるが、首を横に振るだけで俺にしがみついて離れようとしない。 「…もしかして、今日はしたくなかった?」 朝から俺の我が儘ばかり通して、恥ずかしがる悠さんを無視して触れまくったことを反省する。 したくないセックスを強要したのかもしれない。 ところが悠さんは大きく首を振って「…違う」と答えた。 「じゃあ…痛かった?」 悠さんの痴態といつもと違う体位に興奮してしまい、無理をさせたのかもしれない。 「…違う」 それにも否定する。 もう本当にどうしてだか解らなくて、さっきまでの興奮が嘘のように、穏やかに腕の中の愛しい人を抱き締めた。 「…きれ…いか?」 暫くしてようやく落ち着いたのか、悠さんが小さく呟く。 「ん?もう一度言って?」 聞き取れなくて、少し身体を離し顔を覗き込む。 今度は悠さんも嫌がらなかった。 「…呆れてないか?」 不安そうな表情と声。 俺がいったい何に呆れるというのだろう。 「何に呆れるの。全然思いつかないんだけど…」 首を傾げながら答えると、悠さんは顔を少し赤らめながら「だって…」と続けた。 「…俺、あんなお前を襲うような…浅ましい姿見せて。…あんなの、ただの淫乱だ、」 そう言いながらまた目が少し潤んでいく。 「ちょっと待って、何でそう思うの?」 訳がわからない。さっきまでの甘い淫らな時間を思い出すが、悠さんに呆れるどころか最高に興奮していたというのに。 「…だって…、お前、何も言わなかっ…ッ…」 また鼻を啜り、悠さんは顔を隠してしまった。 ………。 …まさか 「もしかして…『気持ち良いか?』って聞いてきた、…あれ?」 おそるおそる聞くと、コクリと頷く。 頭を殴られたような衝撃が走る。 同時に一気に血の気が引いて、俺は悠さんの身体を強く抱き締めた。 「…ごめん、本当にごめんね。違うよ、あれはそんなのじゃないんだ…!」 必死に謝る。 まさか、あの時の俺の態度がこの人をこんなに不安にさせるなんて…! 「呆れてないか?」 俺の背中に手を回し、悠さんはもう一度確認してくる。 俺は腕に力を込めて口を開いたー。

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