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口癖

大型ショッピングモールに出掛け、映画のチケットを買う。 ちょうど始まったばかりらしく、次の上映まで時間が空いてしまった。 「せっかくだし、色々と店を回ってみましょうよ。」 そう言って蒼牙は俺の肩を軽く押しながら歩きだした。 朝食を食べ終わるころにはいつもの口調に戻っていて、『やっと戻ったか。』と内心ほっとした。別に嫌なわけじゃないが、やっぱりこっちの方が安心する。 …色々と心臓に悪いんだよな。 隣を歩く蒼牙を見つめながら思い出していると、「どうかしましたか?」と聞いてくる。 「イヤ、何でもないよ。…それより、」 回りを見回すと、バレンタインが近いためあちこちに可愛らしい装飾がしてあって、女の子達が嬉しそうに商品を手にしている。 「お前は毎年すごい数を貰うんだろうな。」 雑貨屋の一角を占めている『手作りチョコ』と書かれたコーナーを見ながら言うと、「何をですか?」と首を傾げる。 「チョコだよ。」 指でコーナーを指差しながら言うと、少し困ったような顔をして見せた。 「…そうですね。でも本命からのチョコは貰ったことがないです。」 意外な言葉に「そうなのか?」と振り向いた。 「はい。…というか、俺の初恋、どうやら悠さんらしいので。」 照れたように笑う蒼牙に、つられて顔が赤くなるのが自分でも分かった。 「そ、そうか。」 顔が見れない。 そんなことを言われてどう返せというのか。 次の言葉に困っていると可笑しそうに笑われた。 「悠さんって、やることも言うことも男らしくて格好良いのに、言葉にされると弱いですよね。」 ケラケラと楽しそうに笑われ軽く睨み付けると、「そんな顔しても怖くないです。」と余計に笑われてしまった。 「ちなみに…」 続ける言葉に何だ?と視線を向けると、 「照れた時の口癖は、『そ、そうか』です。」 クソッ、聞くんじゃなかった! 「…お前、後で覚えてろよ。」 そう静かに言い放つと先に歩き出す。 後ろから「すみません。」と笑いを堪えた様子で謝る声がしたが、無視して俺は歩き続けた。

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