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5月19日 落ちる3

side 蒼牙 目の前に晒された白い首筋。 俺が付けたキスマークが花弁のように散りとても綺麗だ。 「…蒼牙?」 俺が触れないことを不思議に思ったのか、悠さんが顔を覗き込んできた。 吸いたい。 その身体を組み敷いて、牙をたてたい。 …でも 「…フゥ…今日は止めとくよ。」 「…え?」 意外だったのか、悠さんがじっと見つめてきた。 「今日の俺、かなり理性が働いてないから。こんな状態で貴方の血を吸ったら、加減なんて出来ないよ。」 一日中、悠さんを感じて。 それでもまだ欲しくて。 酔って感情の起伏が激しくなり涙を流した貴方を見た時… 焦りとともに感じたのは醜い満足感だった。 悠さんの感情が全て俺に向いている。 この人を喜ばせるのも悲しませるのも、啼かせるのも…全て俺なのだ。 そう思うと我慢できなくて、『待って』と懇願する貴方を無視して何度も抱き、中に欲を吐き出した。 疲れはて子供のように眠そうにしている貴方に、これ以上の負担をかけたくない。 「加減出来ない…。」 繰り返し呟く悠さんの襟を正そうと手を伸ばす。 こんなに至近距離で晒されていたら、本当に喰らいついてしまいそうだ。 「良いよ、加減しなくて。」 襟に触れるその直前、悠さんがはっきりと言う。 「…何言って」 「お前が望むだけやるよ。それとも欲しくないのか?」 俺の言葉を最後まで聞かず、悠さんは聞いてくる。 「な!そんなわけないだろ。だけど、これ以上負担掛けたくないから…ン、」 言葉の途中で急に口付けられた。 …チュッ、クチュ、 舌を差し込まれ、ゆっくりと舌先を絡めてくる。 「ハッ…悠?」 唇を解放すると悠さんは綺麗に笑った。 「あのな…欲しくなるのも、触れていたくなるのも…お前だけじゃない。俺だってお前に同じこと感じてる。」 微笑みながら顔を撫でられた。 「お前が俺の血を求めてくれるとき、俺は幸せな気持ちになれる。もし負い目感じてるならそれは違う…俺は嬉しいんだから。」 そう言って悠さんは俺に抱き着いてきた。 「蒼牙が大好きだ。だからお前に飲んで欲しい…」 優しい声…暖かい身体… 泣きたくなるほど愛しい存在。 俺は悠さんの身体を反転させ押し倒した。 「…ありがとう。」 貴方に会えて、俺も幸せです。 想いを込め伝える。 ゆっくりと顔を近づけて脈打つ首筋にキスを送ると、俺はそこに牙をたてたー。

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