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感謝

「悠さん、はい。」 広いレストランでのバイキング形式の朝食は、好きな時間に行けるのが良い。 悠さんの分も料理を皿に取り、席に座っていた悠さんに渡す。 「ありがとう。…頂きます。」 挨拶を一緒にして箸をとる。 今日も俺のほうが早くに目が覚め、朝から悠さんの寝顔を堪能した。 せっかくだから朝風呂にも入り、そろそろ悠さんを起こそうかと思っていると、悠さんは自分から起きてきた。 『…ダルい』 窓際の椅子に腰掛け、身体をダラリとさせていた姿に苦笑した。 暫く目を閉じ考えていた悠さんは、『あー…またやっちまった…』と呟き、『風呂に行ってくる』とフラフラと露天に向かった。 多分、昨夜の出来事には触れないほうが良いのだろう。 ひどく乱れたことや囁いた愛の言葉、俺に首筋を晒してくれたこと。 今思い出しても身体が熱をもちそうな位、昨日の悠さんは凄かった。 「…なんだよ。」 つい視線を向けてしまい、それに気付いた悠さんが聞いてくる。 服の襟元から覗く吸血痕が生々しい。 『加減しなくて良い』という甘い誘い文句に、色々と自制なんか効かなくて…翌朝に悠さんがグッタリするほど吸ってしまった。 「大丈夫ですか?身体…」 そう尋ねると悠さんは顔を赤くした。 「大丈夫…あのな、蒼牙、」 歯切れの悪い悠さんに「はい?」と首を傾げた。 「いや、今更なんだが…とりあえず昨夜のことは、酔っ払いの醜態だと思って忘れてくれ…。」 テーブルに肘を付き、頭を抱えながら悠さんは唸った。 …面白い。 「悠さんの頼みは何でも聞いてあげたいですけど、それは無理です。」 そう答えると俺は席を立ち、悠さんの隣に移動した。 忘れられるわけがない。 悠さんが淫らに腰を振り求め合ったこと。 不安に涙を流した姿。 愛を囁いてくれた時の綺麗な笑顔。 血を求める俺の行為を幸せだと言って抱き締めてくれた身体の温もり。 「絶対忘れません。あんなに幸せな誕生日、初めてでした。…本当にありがとう。」 スルリと頬を撫でる。 そのまま顎を持ち上げ、椅子に押さえ付けてキスをした。 「ンン!…ッ…蒼牙、」 周りから悲鳴とどよめきが上がるが、気にせず唇を奪い続けた。 背中を悠さんが叩く。 一度口を離しその手を掴むと、また深く口付けた。 「ハッ…そ、が…ンッ…」 後で殴られたって良い。 それくらい幸せだから。 だから今は貴方を独占させて下さいー。

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