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内藤くんと蒼牙2
「お疲れ~!」
行きつけの居酒屋でビールを注文し乾杯をする。こうして二人で飲むのはずいぶん久しぶりだ。
二杯目のビールが半分空になったころ、酔いが回ってきた俺は勢いに任せて蒼牙に尋ねた。
「な~、お前が付き合ってる『悠さん』ってどんな人?美人なのか?」
「…何、急に。」
蒼牙は食べていた焼き鳥の串を捨てながら、可笑しそうに笑った。
「だってさ~お前すっげーモテんじゃん。なのに全然遊ばないし、そんなにいい女なら気になるだろ~。」
本当は爪痕とキスマークが気になったからだけど…敢えてそれは口にしない。
「美人系?それとも可愛い系か?」
やや身を乗り出して聞くと、蒼牙は呆れたように笑いそれから首を傾げた。
「その前に。俺、内藤くんに悠さんのこと話してないよね?なんで名前知ってるの?」
ごもっともな質問が可笑しくて笑ってしまう。
自分で気付いてないのか、コイツ。
「だってさっき電話で話してた相手だろ?あんだけデレた声してたら分かるって。」
そう言うと蒼牙は「そっか。」と納得していたので「で、美人?それとも可愛い?」と話を元に戻した。
「どっちかと言うと美人系かな。」
「ふんふん。」
「綺麗な人だよ。優しいし。」
「へー、それから?」
「…料理も上手いよ。」
「料理上手!得点高いな!それから?」
「…え、まだ続くの?」
立て続けに聞く俺に、蒼牙が苦笑した。
「当たり前だろ。今日はそれを聞くのがメインなんだから、ほら喋れ喋れ!」
三杯目を互いに注文しながらせっつく。
「何それ。聞いてないし。」
蒼牙はそう言いながらもまんざらでもないのか口を開く。
「いつもきっちりしていてカッコイイよ。年上だからかな、俺を甘やかすのが上手いんだ。」
ビールをあおりながらそう言うとニコニコと嬉しそうにしている。
…なんだろ、何かひっかかった気がする。
「へ~、年上なんだ。じゃあ結婚とか話は?出るんじゃないのか?」
まだ俺らは若いけど、年上の女性なら考えるんじゃないかな。そう思い尋ねた。
「…俺はしたいけどね。」
蒼牙は照れたように笑い、「あのさ、こんな機会ないからノロケても良い?」と確認をしてきた。
もちろんそれを聞きからかうのが目的だ。
そしてあわよくば彼女を通じて誰かを紹介してもらえたら…(これが本音)
しかし俺のこの期待が大きく外れることを、この時の俺はまだ知らなかったー。
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