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内藤くんと蒼牙5
今日は日曜日。せっかくの休みを街でブラブラと過ごす…一人で。
蒼牙と飲みに行ったあの日。
俺がなつくからイヤだと言い張り、結局会わせてもらえないというオチで解散した。
…何だよ。
そんなにケチらなくても良いじゃないか。
ただノロケられて終わった飲みは、独り身の寂しさを痛感しただけとなってしまった。
「ハァ…、どこかに良い人いないかね~。」
書店を呟きながら歩いていると、向かいから小さな子供が走ってきた。
ぶつからないように避けた…までは良かったが、避けたことで中央に置かれていた棚にぶつかり。
「ウワッ!」
ドサドサドサ!
積み上げてあった本を崩してしまった。
「すみません!」
誰に謝るでもなくその場にしゃがみ、本を拾い上げていく。
周りには他の客もいたが、見ているだけで手伝ってはくれない。
ハァ…ついてない。
溜め息を吐いたその時、横から男の手が伸びてきて一緒に拾い始めてくれる。
「え、あ、ありがとうございます。」
とっさにお礼を言い相手を見た。
「ん、気にしなくて良いよ。子供避けたのに災難だったな。」
そう言って笑った男に一瞬見惚れた。
なんというか、その、綺麗な人だな。
整った顔立ちもそうだけど、笑った顔や柔らかい声、纏った雰囲気が綺麗だ。
「はい、これで最後。」
男の言葉にハッとした。
「あ、ありがとうございました。その、助かりました。」
慌てて頭を下げていると「どうかしましたか?悠さん」とよく知った声が聞こえてきた。
……え、悠さん?
頭を上げて向かいの男を見つめ、隣に歩いてきた声の主を見た。
「蒼牙!」
つい指差して大きな声を出してしまった。
「内藤くん…ハァ…。」
蒼牙は俺を見て溜め息を吐いた。
人の顔見て溜め息吐くなよ!傷つくだろーが!
「なんだ、お前ら知り合いか?」
本を拾ってくれた男…悠さんが不思議そうに尋ねてきた。
「はい。はじめまして、内藤って言います。蒼牙の友人です。」
「違います。ただの同僚です。」
横からトゲのある声が聞こえたが、無視してやった。
ざまーみろ。
ケチケチするからこういうことになるんだよ。
久しぶりに爽やかな気分で蒼牙を見やる。
ニヤッと笑った俺に、憮然とした表情の蒼牙。
その横で笑っている悠さん。
ホント、綺麗な人だな。
蒼牙が心配したように、俺が悠さんになつくのに時間は掛からなかったー。
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