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無自覚と警戒心2

「どうかしたか?」 いつもとは違う雰囲気を不思議に思い声を掛けるが、蒼牙は少し困ったような顔をして見せるだけで。 「いえ、何でもないです。」 いや、何でもないって表情じゃないだろー。 そう思い口を開きかけると「ほら、駅に着きましたよ。」と遮られた。 窓の外を確認すると確かに目的の駅で、俺は仕方無しにホームへ降りた。 改札をくぐり蒼牙の顔を見るが「どうかしましたか?」と、いつもと同じように微笑み返される。 自然なその笑みにはさっき感じた違和感がなくて、「…いや、行くか」と俺は蒼牙を促し歩き始めた。 …気のせいだったのか? 結局その後、聞き出すことができないまま時間は過ぎ…現在、帰りの電車を待っている。 帰宅ラッシュとも重なり帰りは満員電車になっていた。 なるべく離れないように気を付けてはいたが、気付けば蒼牙は間に何人か挟んだ場所に立っていて互いに苦笑した。 人を潰さないように足を踏ん張り、吊革に掴まって窓の外を眺める。 流れる景色を見つめながら明日からの仕事の流れを考えていると。 …ゴソ 尻に違和感を覚えた。 …何だ? 荷物でも当たっているのか? そう思い身体を捩るが、違和感は一緒に付いてくる。 そして…あろうことか、尻から太ももにかけてそれは往復を始めた。 …!! 間違いない、これは手の感触た…! 「…ッ!」 驚きに声が出なかったが、すぐに我に返り手を掴もうと身動いだ。 その時、後ろから気持ち悪い声がした。 『今日はスーツじゃないんだね…髪も下ろして…かわいいよ』 背筋に悪寒が走った。 一瞬にして身体が強張る。 囁かれた言葉を頭が理解できず、撫でてくるその手だけがリアルに感じられた。 …気持ち悪い!! 『この間邪魔されてから…気になってたんだよ…』 続けて囁かれる言葉と耳の裏を這う濡れた感触。 心臓が凍りついた。 気持ち悪さに身体が震える。 あの日助けた女性を襲っていた痴漢。 ソイツが今、俺の後ろに立っている。 パニックになりかけた頭がそう理解するが、強張った身体は直ぐには言うことをきいてくれない。 そして…尻を撫でていた手が前に回されてきた。 …ふざけんな!!! 頭がカッとなり声を上げようとした瞬間。 前に回された手が離れ、「痛ッ!な、離せ!」と言う叫びが聞こえる。 自由になった身体を振り向かせる。 そこには見たこともない表情の蒼牙が立っていたー。

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