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Dog or Wolf 2

side 悠 蒼牙が居なくなり店内を見回していると、向かいに座っていた内藤くんが話しかけてきた。 「この席、窓からの景色が綺麗じゃないですか?」 「え?」 「ほら、ピアノも見えやすいし、他のテーブルと違って周りには観葉植物なんかも置いてある。」 「…あぁ、本当だね」 内藤くんに言われ見回してみる。 ホテルの上層階にあるレストラン窓からは、綺麗な夜景が広がりキラキラと輝いている。 周りには植物が配置してあり、他のテーブルが気にならなく落ち着くことができる。 店内に置かれたピアノからは程よく距離があり、生演奏が始まっても食事を邪魔することなく、一緒に楽しめそうだ。 「ね?…本当は予約席なんですよ、ここ。」 「え、そうなのか?」 内藤くんが呆れたように笑いながら頷いた。 「はい。だから予約者以外のお客を通したりしちゃダメなんですけど…アイツ、勝手にキープしてたみたいですね。」 ケラケラと笑いながら「悠さん大切にされてますね。」なんて言うから、やっと引いてきた顔の熱がまた再燃する。 以前ここに来たときには働いている蒼牙をゆっくりと見られなかったから、今回はそれをちゃんと見たくて来た。 だから別に席はどこでも良かったのだが…こうやって準備して貰うと申し訳ない気持ちになってしまう。 でも嬉しいのも確かで、蒼牙の気遣いに笑みが浮かんだ。 「…!俺、見てない!」 急にワタワタと慌て、どこか違う所に目線を向けた内藤くんが小声で呟きながら手を振っている。 「…?」 視線を向けると奥に蒼牙が立っていて、俺と目が合うとニコリと笑った。 「…アイツ、本当はスゲー裏表あるでしょ。悠さんよく付き合ってますね…」 溜め息とともに呟き項垂れた内藤くんに苦笑した。 別に裏表があるとは思わないが、性格が変わるのは確かで。 「…あれはあれで可愛い時もあるんだよ。」 と返した。 蒼牙に視線を戻し、その姿を堪能する。 スラリと高い身長に長い手足。 黒のギャルソンの制服が様になっていて、色素が薄いせいか、まるで洋画の中に出てくる俳優のようだ。 少し長い後ろ髪は邪魔にならないように束ねてあって、頭が小さいことが際立っている。 そしてあの顔。 高い鼻梁に切れ長の二重。少し薄い唇はいつも優しく微笑んでいる。 あの独特の深く蒼い瞳に見つめられると、幸せな気持ちになる。 …本当、完璧だな。 店内を忙しく動く蒼牙を見つめながら思う。 さっきから休む間もなく動き回り接客をしている。 店内は女性客が多く、優しく笑いかけながら蒼牙は対応していた。 …以前は分からなかったことが今は分かる。 あの笑顔は明らかに営業スマイルで、俺に向ける笑顔とは全く質が違う。 蒼牙はもっと照れたようにクシャッと笑う。 犬の時は後ろに尻尾が見えるくらい嬉しそうに目を細める。 …さっき案内してくれた時みたいに。 …それにしても、 「今日もアイツは忙しそうっすね。」 机に頬杖をついて内藤くんが呟く。 同じ事を考えていた俺は「みたいだな。」と返し笑ったー。

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