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Dog or Wolf 4
side 蒼牙
入れ代わりでレストルームに向かう悠さんを見送り、座って料理を食べ始めた内藤くんを見下ろす。
「…何だよ。」
俺の視線に気付いた内藤くんがそう言って体を強張らせた。
「…勝手に悠さんと連絡とらないでよね。」
しかも、赤くした顔で嬉しそうに微笑むという…かなり可愛い表情まで見て。
「まったく、だから会わせたくなかったのに…」
こうなる気はしていたんだ。
溜め息を吐きながら、内藤くんのグラスにも水を足す。
「だからって、遠くから睨むなよ!お前、顔が良いから睨まれると怖いんだよ!」
「それは悠さんの可愛い顔を見るからでしょ。一体、何を話してたのさ。」
そう言って内藤くんを見ると、少し得意気に笑われ眉間にシワが寄った。
「この席のことだよ。『予約席』だって教えてあげて『大切にされてますね』って言ったら、ああなったの。」
「え、」
内藤くんがニカッと笑う。
思わぬ返事に言葉が出てこない。
「お前の勝手なキープを喜んでたよ。…良かったな。」
内藤くんが笑いながら告げる。
その笑いはからかったり、面白がったりしたものではなくて。
眉間に寄っていたシワがなくなり、俺の顔にも笑みが浮かぶのが分かった。
「…うん、…ありがとう」
頭の中を整理させながらそう素直にお礼を言う。
少しビックリした顔をした内藤くんに軽く一礼してその場を離れると、厨房に水を返してからレストルームに向かう。
『ああ、美味しいよ。蒼牙が働いている姿を見るのも楽しいし…席は綺麗だし。…ありがとうな』
お礼を言った悠さんの言葉の意味を知る。
俺が予約席をキープしていたことを知っていたから『ありがとう』と言ってくれた。
そして、その特別な席に『お前と来たかったかな』とも言ってくれた。
あの席で内藤くんと二人で座っているのを見ていて…すごく面白くなかった。
自分で用意したくせに、貴方の隣に座っているのが俺じゃないことが悔しかった。
仕事をしている間に感じていた悠さんの視線がなかったら、あの場で内藤くんに見せつけるようにキスをしていただろう。
だけど…そんな子供じみた思いも全て消えてしまった。
悠さんを抱き締めたい。
あの目眩がしそうな香りを胸に吸い込み、キスをしたい。
そして、もう一度あの言葉を言って欲しい。
真っ直ぐにレストルームに向かいながら、自分の中で何かが変わるのが分かったー。
「…お前と一緒に来たかったよ、蒼牙…ンッ」
唇が触れそうな距離で囁く悠さんに、噛み付くように口付ける。
「ンッ…ハッ、蒼牙…」
ピチャ…チュッ、
深く貪るように舌を絡め上顎を擽る。
歯列の裏、舌の根本、全てを味わい舌先を触れ合わせる。
「ンア、人が…く、る…ンッ…」
キスの合間に必死に伝えてくる悠さんの後頭部を押さえ付け、逃げられないようにしてキスを繰り返した。
唇を何度も離しては角度を変えて重ねる。
クチュ…、クチ、ピチャ…チュッ、チュクッ、
飲み込みきれなかった唾液が悠さんの顎を伝い、それすら舐め上げてはまた深く重ねた。
「ンッ…あっ…ッ…!」
やがて力が抜けたのか、悠さんがガクッと項垂れかかり、身体を預けてきた。
「ハァ…ンッ…なに、急に…」
息を整えながら呟く悠さんの身体を抱き上げ、洗面台に座らせた。
「可愛いね…悠。…腰抜けちゃった?」
顔を覗き込みそう言うと、悠さんは真っ赤になって睨んでくる。
「…何で、性格変わってるんだよ」
俺の肩に頭を乗せ、顔を隠してしまった悠さんが呟く。
その細い身体を抱き締め顔をずらすと、柔らかい耳朶を食んだ。
「…ンッ…!」
「…さぁ、どうしてだろうね」
予想通りの反応が返ってきて、クスクスと笑いながらそう囁く。
相変わらず耳が弱い。
俺の自惚れでなければ、多分俺の声にも反応している。
だから、いつもわざと耳元で低く囁く。
そうすると途端に貴方の力が抜けるから…。
今も力無く俺に寄り掛かるようにして身を任せてくる悠さんの背中を優しく撫でた。
「ん…もう行かないと、内藤くんが変に思う…ンッ…」
離れようとする悠さんの身体を引き留め、顎を持ち上げるともう一度キスをした。
…チュッ、
音をたてて離し、その赤く濡れた唇を指でなぞる。
「あんまり、内藤ばっかりかまったら…後がツラいからね?」
「な…ッ…!」
至近距離でそう囁けば、一気に悠さんの顔が赤くなる。
その赤く染まった首筋に顔を近づけると、晒されたそこに強く吸い付いた。
「ンン…ンッ…!」
最後に吸い付いたそこを舌で舐め顔を離す。
悠さんの首筋には、紅くくっきりとキスマークが付いていた。
自分でつけた所有印を見つめ微笑む。
そして…見える場所に付けられていることを拒まなかった悠さんに、俺の心はこれ以上ないくらい満たされた。
ギュッと悠さんの身体を抱き締めた。
そろそろ戻らないと、俺もまだ仕事が残っている。
「…蒼牙」
悠さんが背中に手を回してくれる。
可愛い、離したくない、
愛しい。
だけど...
甘く芳醇な貴方の香りを胸に吸い込み、俺は身体を離した。
「…じゃあ、そろそろ戻りましょうか。立てますか?悠さん」
そう言って手を差し出すと、悠さんは苦笑しながら手を握ってくれたー。
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