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桜と想い3

「ん、...っふ...」 桜の木の根本に座り俺を膝抱きにした蒼牙が、優しく口付けてくる。 通りとは反対側に座り、周りからは死角になっているとはいえ..近くにはまだ他の花見客がいて。 桜のライトアップで周囲は薄明かるく、覗き込めば俺達が何をしているかなんて一目瞭然だ。 着ていた上着を脱ぎそれを俺の頭に掛けてくれているから、俺達の顔は見えていないはずだが。 「...ん、蒼牙」 唇を離し至近距離で目を見つめる。 深く蒼い瞳に吸い込まれそうだ。 「悠さん、実は酔ってないでしょ。」 クスクスと笑いながら蒼牙が呟く。 頬を撫でてくる手が気持ちよくて、目をつむると瞼にキスをされた。 「...酔ってるよ」 もう一度、今後は俺から口付けながら囁く。 柔らかい唇を軽く食むと、深く口付けられた。 チュ...クチ、クチュ... 舌を絡め、互いの熱を分け合う。 「..ん、...じゃあそういう事にしときます。」 唇を離した蒼牙が綺麗に笑いながらそう言い、頭を上着ごとぎゅっと胸に抱き締められた。 ドクンドクンと耳に伝わる蒼牙の心臓の音。 暖かい胸と規則正しいその音に抱かれて、とても安心できる。 俺は目を瞑り、先ほどのやり取りを思い出していた。 『キスしたいな』 そう言った後のことはまるでスローモーションのようで。 振り向いた蒼牙の目が嬉しそうに細められ、上着を脱ぎながら近づいてきた。 俺はその場から動けなくて、蒼牙がゆっくりと俺の頭に服を被せてくれるのをただ見つめていた。 そのまま上着を引っ張られ温かい唇が頬に、瞼に、額に触れる。 『...どこにキスして欲しいですか?』 意地悪な質問をされて顔が赤くなった。 焦れて俺から口付けようとしたら、わざと顔を引いて逃げる。 『ちゃんと言ってください。』 恨みがましく睨むと、唇を指でなぞりながら愉しそうにそう言われた。 『...口、に』 そこまでが限界で、人目があることにもだんだんと耐えられなくなり下を向く。 それでも何とか『...口にして欲しい』と小さく呟くと、すぐに顎を掬われ気が付いた時には蒼牙に口を塞がれていた。 周りからざわめきが聞こえる。 でもそれを気にする余裕なんかないくらい心地よいキスに、アルコール以上に酔いしれた。 『...フッ、可愛いですね。』 手を引かれ桜の根本に座る蒼牙を跨がされる。 その後はずっと優しく口付けられ、何度も『好きです』と囁かれた。 暖かく大きな手が背中を撫でる。その優しい動きにだんだんと睡魔が襲ってくる。 「蒼牙、眠い...」 顔を胸に押し付けたまま呟くと、クスクスと笑われた。 頭に口付けながら蒼牙が囁く。 「まだ寝たらダメですよ。家まで我慢して下さい。」 上着の隙間から蒼牙を見上げると何か企んでいるような顔をしていて。 目が合うとニコッと蒼牙が笑う。 「だけど、帰っても当分は眠れないですけど。」 蒼牙の手がゆっくりと下がり、腰骨から尻、太股にかけてヤワヤワと揉まれる。 明らかな意図をもったその動きに、身体が熱をもつのは簡単で。 「...ッン、」 身動ぎ腰を動かすと、蒼牙の下半身に擦り合わせる形になり余計に身体が熱くなる。 「...帰ったらいっぱい触らせて下さい。」 小さく呟き、抱き締める腕に力を込めてくる。 余裕そうな態度とは裏腹に少し切羽詰まって聞こえる蒼牙の声。 それが可笑しくもあるけど...何よりも嬉しい。 「...帰ったらな。」 そう言って身体を起こすと、嬉しそうな表情の蒼牙と目があった。 舞い落ちてきた桜の花びらが蒼牙の前髪に付いていて、それを指で摘まむ。 桜の木の下で見る蒼牙は本当に綺麗で、胸が締め付けられるようだ。 「....愛してるよ、蒼牙」 「...ッ!!」 あまり口にしない愛を囁く。 驚いた顔をした蒼牙が可愛くて、クスリと笑いながらもう一度「愛してる」と伝えた。   沢山の人がいる中で、蒼牙が俺を選んでくれて良かった。 こんなに人を愛しく思えるのは、きっとこの先二人といないから。 だから...お前と会えて、お前を愛せて、お前に愛されて...本当に良かった。 グッと引き寄せられ、耳元に熱い唇が寄せられる。 「家まで我慢します...けど、帰ったら覚悟してください。」 強く抱き締めながら蒼牙が呟く。 そうしてその力強い腕に引っ張られ立たされると、そのまま蒼牙は歩き始めた。 被っていた上着が落ちかけ、慌てて手に取る。 「蒼牙?」 無言で手を引き歩き続ける蒼牙に声を掛けると、「すみません」と謝られた。 「電車は待ちきれません。タクシー拾います。」 ばつが悪そうに顔をくしゃりと歪めて言う姿に、また胸が締め付けられた。 待ちきれないのは俺も同じだよ。 そう心の中で呟き、繋いでいた手を強く握り返したー。

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