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週末

side 悠 週末になり明日は休み。そして、バレンタインだ。 ショッピングモールでバレンタインの話になった時、『本命から貰ったことがない』と言った蒼牙。 …俺があげたら喜ぶだろうか。 というか、多分喜ぶ。 でもな…当たり前だけど、貰ったことがあってもあげたことなんかない。 海外では男性もバレンタインにプレゼントをすると聞いたことがあるが、如何せんここは日本だ。あの可愛らしいチョコレートゾーンに並ぶ勇気がでない。 さんざん悩んで今日。 蒼牙が喜ぶなら、と勇気を出してチョコを手に並ぶ。 …コンビニで。 せめて美味しそうなのにしようと、有名ホテルのパティシエが考案したというチョコを選んだ。 今日は先に仕事が終わった蒼牙が俺のアパートに来ているはずだ。 貰った合鍵で開けるのが嬉しいのだと、俺がいる時でもわざわざメールを送ってきて鍵を使う。 『帰りました。』と嬉しそうな表情で玄関に入ってくるから、俺も『おかえり。』と出迎えるようになった。 少しずつ蒼牙の荷物も増てきた。いちいち『置いといても良いですか?』なんて聞いてくるから、『聞かなくていい。』と何度も答えた。 その度に照れたように笑う。 ホントに、アイツはやることや言うことがいちいちカワイイ。 …セックスは可愛くないけどな。 情事の時の蒼牙を思い出して顔が熱くなる。 全く、こんなに他人を想う日が来るなんて…想像もつかなかった。 格好良くて、だけど可愛くて、俺のする事に一喜一憂する蒼牙。 アイツが喜ぶなら、嬉しいのなら俺は何だってしてやりたいんだ。 早く帰ろう。 きっと尻尾を振って迎えてくれるから。 コンビニの袋を鞄にしまい帰路を急いだ。 見上げたアパートの窓が明るいことにこんなにも安心する。 階段を登りながら、電話をした。 「帰った。鍵を開けてくれ。」 そう言うと、目の前の扉がガチャリと開く。 「おかえりなさい。」 笑顔で迎えてくれた蒼牙に、やっぱり耳と尻尾が見えた。

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