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愛しくて2
大きくため息を吐く。
一通りのことを話し、なんとなくばつが悪くて蒼牙の視線から顔を反らしていた。
話始めてどのくらいの時間が経ったのか。
時計の針の音がひどくゆっくりに聞こえる。
蒼牙は呆れていないだろうか。
また自覚がないと、警戒心をもてと言われるのではないか。
そんな不安を感じながら、恐る恐る蒼牙の顔を見れば、そこには穏やかに俺を見つめる瞳があった。
「ありがとう、悠」
「···え、」
思わぬ言葉に見つめ返せば、優しく微笑みながら蒼牙は俺の頬に手を伸ばしてきた。
「悠が帰ってくる前にね、篠崎さんと話をしたよ。」
「朔弥と?」
「うん。その時にね、全部聞いた。」
頬を撫でていた手がゆっくりと移動し、耳を擽るように触れる。
それがくすぐったくて首を竦めると、チュッと目元にキスをされた。
「悠の話が、篠崎さんと全く同じで安心した。もし何か隠されてたら、ちょっとショックだから···」
チュッチュッと顔にキスを繰り返しながらそう言う蒼牙に、俺は少しムッとして顔を引き離した。
「隠すわけないだろ。俺はちゃんと話すって言った。」
「わかってるよ。だけど、不安にもなる。清司さんの時とは違うから。···大切な弟だからこそ、俺には知られたくないこともあるだろ?」
困ったように笑いながら蒼牙は俺を抱き寄せた。
確かに弟に告白されたなんて知らせたいことではないが、蒼牙には黙っておくことができない。
···というか、黙っていても気付かれそうだ。
広い背中に腕を回しきつく抱き締めると、蒼牙も腕に力を込めてくれる。
安心できる、焦がれた腕の中。
離したくない、失いたくない温もり。
背中に感じる力強い腕に安堵の息を吐き出すと、優しく背中を撫でてくれた。
「···だから話してくれて、俺を安心させてくれて、ありがとう。···それと、」
黙ったまま抱き締められていると、蒼牙が俺の顔を覗き込んで言葉を続ける。
「辛かったね。もう、我慢しなくても良いよ。」
胸が熱くなる。
どうして、どうして蒼牙には分かってしまうのか。
朔弥に応えてやれなかった、気付いてやれなかったことが悔しくて。
大切な弟だからこそ、傷つけたくなどなかった。
我慢していた気持ちが一気に溢れてくる。
目頭が熱くなって、鼻の奥がツンとなりながら蒼牙の顔が近付いてくるのを見つめた。
唇が触れる寸前、頬を温かい涙が伝うのが分かったー。
「ん、ハァ、蒼牙···」
繰り返される熱い口付けに息が上がる。
何度も舌を絡めては上顎を擽り、吸い上げられる。
ピチャッ、クチュ···
確かめるように背中や腰、頭を撫でながら、蒼牙は俺の唇を奪い続けた。
「···悠、そんな顔他の人に見せたらダメだよ。」
唇を離し額を合わせながら囁かれた言葉に、「そんな顔···?」と小さく返した。
「涙をためて、息切らして···メチャクチャにしたくなる、その顔。」
「な、なんだよ、それ····ッ!」
言われた言葉に一気に顔が熱くなった。
言い返そうとしたその時、腰に蒼牙の熱い塊があたり言葉を失った。
熱く、固くなったそこを感じるのは久しぶりで。
俺を求めてそうなっているのかと思うと、愛しくて堪らなくなる。
···俺も早くお前が欲しいよ。
そう心の中で呟きながら、震える指で蒼牙の顔に触れた。
「···蒼牙、」
「ん、なに?」
その手を掴まれ、指先にキスをしながら俺を見つめてくる。
その顔は、俺が何をしてほしいのか分かっていて···分かっていて俺に言わせようとしている。
「お前にならメチャクチャにされても良いよ···だから、」
そこまで言って蒼牙の首に腕を回す。身体を擦り寄せながら言葉を続けた。
「だから、ベッドに行こう··?」
耳元で囁くと、次の瞬間には身体が抱き上げられていた。
「···今日はちょっと手加減できないかも。」
ベッドに移動しながら囁かれた言葉に背筋に甘い痺れが走る。
抱き上げた時とは反対に、優しくベッドに降ろされ、馬乗りになった蒼牙を見上げた。
優しいだけではなく、色気を纏った艶のある顔。
「···いらないよ、手加減なんて。お前の好きにしろ。」
だから早くお前を感じさせて欲しい。
焦がれるような強い思いに突き動かされ、覆い被さってくる熱い身体を抱き締めたー。
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