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内藤くんと蒼牙Part 2

「お前さ、最近やけに機嫌が良いよな。なんか良いことでもあったの?」 仕事が終わり、スタッフルームで一緒になった蒼牙に声をかけた。 この数週間、コイツの笑顔に拍車がかかりキラキラと輝いて見えるのは気のせいではないと思う。 「うん。分かる?」 着替えながら俺を見ると、蒼牙はニッコリと笑った。 ···あ、やっちまった。つつかなくていい藪をつついてしまった。 以前の俺ならコイツの笑顔を見ると『イケメンが笑った‼』と不覚にもドキドキしていたが、今は違う。 付き合いが深くなるにつれて理解した。 この笑顔を見せる時は悠さんが関わっている。 それはつまりただのノロケであって、ノロケだしたコイツはこっちが恥ずかしくなるほどデレる。 「あ、いや。いいよ、話さなくて。」 慌ててそう拒否してみるが、時すでに遅し。 「今日、これから暇でしょ?ちょっと付き合ってよ。」 にこやかにそう言うと、蒼牙は俺の腕を掴んだ。 そのままズルズルとひこずるようにして扉に向かうと、他のスタッフに「お先です。」と笑顔で挨拶をして出ていこうとする。 「ま、待てって!俺、まだ行くって言ってない‼」 掴まれた腕を振りながら訴えてみるが、途端に「ダメなの?」とシュンとする姿についほだされてしまう。 なんだよ!その態度!!  初めて見たぞ? ほら、周りの他のスタッフ達もアタフタ···というか赤面してるじゃないか!? 「いや、ダメっていうか···そ、そうだ、悠さんは?待ってるだろ?」 思い付いたままに口にすると、蒼牙は「大丈夫。」と笑った。 「悠さん今日は遅くなるから。内藤くんにお願いがあるし、ちょっと付き合ってよ。」 う···なんだよ、そのキラキラした笑顔。 嫌な予感がする···けど、断れないだろ、そんな笑顔見せられたら! 「···分かったよ。で、どこに行くんだ?」 なんとも微妙な気持ちで蒼牙を見上げる。 『かわいいところもある』って悠さんが話していたことがあるが、こういうところだろうか。 でも俺は知っている。 コイツのこの態度は、悠さんが関わった時にしか見せないことを。 本当のコイツは無害なかわいい犬なんかじゃないことを。 「ありがとう。とりあえず、飲みに行こうか。ゆっくり話したいし。」 そう言って部屋を出ていこうとする蒼牙はなんだかウキウキしているようにも見える。 きっとこれからメチャメチャにノロケられるんだろうな···ため息混じりに背中を見つめながら、俺はその後を着いていったー。 賑わいを見せる居酒屋の個室で、俺は現在砂を吐いている。 本当に、誰かこの男をどうにかしてくれ···。 「で、それがまた可愛くて。思わずその場でキスしちゃった。人がいたし、遠慮して頬にだけど。」 嬉しそうに盛大にノロケる蒼牙。 もうこのくらいのセリフでは動揺しないくらいには、俺の免疫はできあがっている。 店に入ってから約一時間。 最初は仕事や先輩たちの話で盛り上がっていたが、話題がプライベートのことになると蒼牙の顔が弛みっぱなしになった。 蒼牙の話す悠さんはひたすら『優しくて綺麗で可愛い男』だが、俺の認識では『大人のかっこいい男』だ。 落ち着いた物腰、柔らかい雰囲気、周りに気を配るその姿は俺の憧れでもある。 だから蒼牙が悠さんに惚れ込むのも、こうやってノロケたくなるのも分からないではない。 それに、蒼牙が自分のプライベートの話をしてくれることは素直に嬉しいとも思っている。 思ってはいるが···頼むからもう少し包んで言ってくれ! 「それで、俺に頼みたいことって何?」 話題を変えるつもりで切り出した言葉は、蒼牙から一層の笑顔を引き出した。 その笑顔はどこか得意気にも感じられ、少し警戒してしまう。 「うん。あのね、悠さんをお嫁さんにもらったから、今度引っ越しするんだ。」 「ブハッ!!」 突然の言葉に驚き、思わず飲んでいたチューハイを噴き出してしまった。 ゴホゴホと咳き込む俺に「大丈夫?」とおしぼりを差し出してくれるのに軽く手を上げて応えると、俺は真っ赤になったまま蒼牙を見た。 「え、どういうこと?お嫁さんにって、何?」 俺がわたわたと聞くのを「やっぱり内藤くんは面白いね。」とクスクスと笑って見ていた蒼牙は、嬉しそうに話し出したー。

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