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新生活に向けて2

side 蒼牙 ベッドを買いに行くことを照れた悠さんが可愛くて、ついついからかってしまった。 あまりからかって拗ねてしまってもいけないのでほどほどのところで止める。 そうしてやってきたファミレスで、また悠さんの男前な姿を目撃してしまい、惚れ直すと同時にまた嫉妬してしまった。 この人が他人に優しいことなんか今に始まったことではないからそれは別に良いんだけど···あの綺麗な笑顔をあまり他人に見せないで欲しい。 案の定、顔を赤くさせたウェイターの娘はチラチラと悠さんを見ている。 それにしても···さっきからすごく魅惑的な香りが漂っている。 さっきの衝撃で口の中を切ったのだろう、一気に強まった血の香りに心臓がドクドクと音をたてる。 まだこれからベッドも見に行きたいし、何よりこんなところでガッツクわけにはいかないから我慢しないといけないが··· 「少し切っただけだよ、何ともない。」 そう言うと腕から抜け出そうとする身体。 その瞬間、フワリと悠さん自身と血の香りが舞い上がり···俺の鼻を擽った。 「じゃあ、問題ないですね。」 堪え性のない自分に呆れつつ、柔らかい唇を奪う。 「ん、ッ蒼牙、人がくる··フッ··」 キスの合間に開いた唇に舌を滑り込ませた。 感じる口腔内の熱と甘く広がる血の味に、身体が一気に熱くなる。 チュッ、チュク···· 舌を吸い上げ、口腔内を舐める。 覆い被さるように胸に抱き込み、角度を変えて深く唇を合わせた。 下唇の裏側、歯にぶつかって切れた傷を舌先でつつき吸い上げると、悠さんの身体がピクリと動く。 溢れる唾液と僅かな血を飲み込み、また吸い上げる。 「···痛い?」 僅かに唇を離し聞くと、「···痛くない、けど、」とうっすらと瞳を開けた。 「これ、眠くなったらヤバイから···」 いつも吸血すると眠ってしまうことを言っているのだと思うと、クスリと笑いが溢れた。 「じゃあこれで最後···」 「ン···」 そう言ってもう一度唇を塞ぎ、舌で傷を舐めた。 腕の中で僅かに震える身体が愛しい。 もっと···と、身体の中から沸き上がる気持ちを押さえつけながら下唇を食み、ゆっくりと解放した。 「ごちそうさま。」 ニッコリと微笑むと、真っ赤になった顔を逸らされた。 その首筋に牙をたてたい···そんな欲望をごまかすように、わざと「なに、まだ吸って良いの···?」と耳元で囁く。 「ッ、もう充分だろ!」 俺の胸に手を当て押し戻すと、悠さんは今度こそ腕の中から抜け出した。 耳まで赤く染まったその姿に煽られながらサラサラな髪を撫で上げる。 表れた額に軽く口づけると、「··ここ、お前の奢りな。」と呟く声が聞こえた。 「喜んで。あぁ、ここ出たらベッド見に行くから。悠もどんなベッドが良いか考えておいて。」 クスクス笑いながら瞳を覗き込む。 何も言わずますます顔を赤く染めた悠さんの表情が可愛くて、俺はとうとう声をあげて笑ってしまったー。 「思ったよりたくさん種類がありますね。」 大型の家具店の中、ゆっくりと歩きながらベッドを見て回る。 展示してあるものはほとんどがシングルだが、安いパイプベッドから天蓋ベッドまで種類も豊富だ。 ここに来るまでは照れている様子だった悠さんも、こうやって見て回るうちに恥ずかしさも消えたのか、座ったり撫でたりして感触を確認している。 「これなんかどうですか?」 笑いながら俺が指差したのは白を基調にした天蓋ベッドで、流れるレース地には花が刺繍してある。 「···お前、ふざけたつもりかもしれないけど···意外と似合ってるからな。」 「えっ、マジですか!?」 思わぬ返答にベッドを見つめた。 後ろから笑い声が聞こえて、悠さんも楽しんでいるのだと嬉しくなる。 それにしても···· このメルヘンチックなキラキラベッドに横たわる悠さんを想像してみる。 あれ、意外と良くないか···? 決して女性的ではないが、飲んだときに色っぽさが倍増する悠さん。 このどこか隔離された空間で乱れる姿を想像してみて、思わず口許を押さえた。 ヤバイ、良い···! 「悠さん···イタッ!」 これにしませんか?···と続けようとした言葉は、脇腹にくらった肘打ちで遮られた。 「買わないからな!」 「····はい。」 キッと睨み付けてくるのに苦笑する。 なんで分かったんだろう···と思いながらも、どうしても実際に見てみたくて。 「うわっ!」 隣に立つ身体を抱き上げ、そのままベッドに下ろす。 「お前、何考えて··」 「はい、じっとして!」 「は?」 降りようする悠さんを制して、一歩下がる。 うん、やっぱり良い···。 顔を赤くし俺を見上げているその姿に、もう一度口許を押さえた。 どうしよう写真に撮りたい···。 思い付いたままにスマホを取り出すと、慌ててベッドから降りてきて奪われた。 「これ以上ふざけた真似してみろ、部屋を分けるからな。」 「う、···ごめんなさい。」 ワントーン落とされた声に悠さんの本気を感じ、すごすごとスマホをしまう。 「ほら、次のベッド見に行くぞ。」 そう言って先に歩き出したその耳は赤いままで、怒っているわけではなく照れているのだと、笑いが溢れたー。

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