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引っ越し祝いの副産物2(※)
side 蒼牙
「悠さん、まだ飲みますか?」
「···んー?···うん、」
リビングのソファに寄りかかり、天井を見上げた悠さんに声をかける。
ほんのり色付いた首筋と鎖骨が晒されていて、それだけで俺の心を乱してくる。
悠さんが留守の間に見つけたコスプレ衣装。
まだ袋を開けてもいなかったそれを見つけ声を出して笑ってしまった。
悠さんが自分で用意したとは思えないし、恐らくは人から押し付けられたのだろう。
そして俺に見つからないうちに処分するつもりだったに違いない。
風呂上がりに詰め寄った時に見せた、あの慌てた様子が何ともそそられた。
『俺が着せると思った?』と聞くと素直に頷いた悠さん。
···よく分かってるよね、俺のこと。
こんなもの見せられたら着せたくなるに決まってる。
今まで付き合ってきた彼女たちにそんなことを思ったことはないが、悠さんは別だ。
いろんな姿が見たい。
可愛いのも、綺麗なのも、全て目に納めたい。
全て俺のものにしたい。
だからこの衣装を見つけたときから、俺は楽しみで仕方なかった。
だけど、素面の状態でお願いしたって絶対に着てくれる訳がないから。
だから少し卑怯だけど、アルコールの力を利用することにした。
もともとそれほど酒に強いわけではない悠さんは、アルコールが入ると色気が倍増する。
そして···普段とは違いセックスにもかなり積極的になる。
一緒に飲むうちに分かったことは、ビールや酎ハイよりもウィスキーの方が酔いやすく気分も高まるらしいということ。
そうして、スイッチが入った悠さんは最高にエロくて可愛くなる。
顔だけではなく首筋までうっすらと染めているのを横目で見た。
···そろそろ良いかな。
ゆっくりと手を伸ばし綺麗に浮き出た鎖骨に指を這わす。
「ンッ、」
僅かに声をあげピクッと身体を反応させる姿に、知らずと口の端が上がった。
撫でるように鎖骨に触れ首筋に指を伸ばすと、悠さんがソファから身を起こした。
「ん、蒼牙···」
そうして隣に座っていた俺の膝の上に自ら跨がると、手を握り指先にキスをしてきた。
「·····、」
何も話さずただ指にキスを繰り返し、挑発するかのような瞳で俺を見つめる。
チュッ、チュッ··と音を響かせ、指先から手のひら、そして手首へと唇を移動させると、そのまま手首をチロチロと舐め吸い付いてきた。
「何、誘ってくれてるんですか?」
分かっていてわざとそう尋ねながら頬を撫でると、その手にスリッとすり寄り「ん···」と目を瞑る。
「蒼牙···したい··。ベッド行こう···?」
小さな誘う声。
その声を聞いた瞬間、腰がズクンと疼いた。
いつもならここで抱き上げベッドまで運び、思う存分この身体を堪能している。
だけど···今日は違う。
「···蒼牙?」
膝の上に乗った悠さんをそのままに手を伸ばして紙袋の中からナース服を取ると、俺はそれを掲げて見せた。
途端に「···や、それは、」と押し返してくるその手を掴み指を絡ませると、その細い指先にキスを落とす。
「···ねぇ悠さん。俺、貴方の色んな姿が見たいです。かっこいいのも、可愛いのも····恥ずかしいのも··」
囁きながら、色付いた唇に口付けていった。
チュッ···チュッ、
触れるだけのキスを繰り返していく。
そのうちに「や、あ···」と焦れた悠さんが口を開いて深いキスをねだってきた。
···あぁ可愛い··でも、まだダメ··
焦れているのは俺も同じで、すぐさま貪りたいのを我慢してわざと顔を引いてキスをかわした。
「ね?お願いです、見せて···?」
「···え、····や、だ」
濡れた瞳が揺らいでいる。
···あと一息か、
俺はテーブルの上のグラスを取ると、注いだばかりのウィスキーを口に含んだ。
そうして悠さんの顎を上向かせると、開いたその唇に深く口付ける。
「···ん、ンッ、」
白い喉が上下する。
ゆっくりと口移しで注いだウィスキーが、悠さんの喉を通っていく。
飲み込みきれず顎を伝うウィスキーを指で拭い、赤く染まった悠さんの顔を見つめながらもう一度グラスに口をつける。
「···ん、蒼牙···」
今度は悠さんの方から口付けてきてウィスキーを飲んでいく。
···コク、···コク、
チュッ、ピチャ··チュッ···
冷えたウィスキーを飲み、冷たくなった悠さんの舌が俺の口腔内に差し込まれる。
ねっとりと絡み付くその舌に、俺も同じように絡ませ吸い返していった。
「ンッ、ハァ··そ、が··」
合わせた瞳がトロンとしているのに、クスリと笑いが溢れる。
「可愛い···。ほら、早く続きしたいでしょ···?」
耳に口付けると悠さんの身体がピクッと動いた。
耳を舌でなぞり「···ね?」と柔らかく食んでいく。
「·······。」
悠さんがゆっくりと俺の首に手を回し抱き着いてくる。
····よし、落ちた。
心の中でガッツポーズをとった。
顔が弛むのを止められない。
身体を押し付け無言のまま小さく頷くのを感じながら、俺は悠さんの服に手をかけていったー。
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