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引っ越し祝いの副産物4(※)
side 悠
蒼牙の舌が俺自身を舐め上げ、吸い上げていく。
「あ、もう··やだって、ンッ!」
もうすでに一度達していて、放った欲は蒼牙が飲み込んでしまっている。
それでもまだ口を離してくれない蒼牙に震える声で訴えた。
「···ん、でもまだ硬い··篠崎さんのここ···」
上目使いでそんなことを言うから腰がまた疼いてしまう。
それと同時に胸がチクッと痛んだ。
「···スゴいね、後ろまで濡れてる。もっと気持ちよくなりたい?」
「や、あ···ンッ!」
長い指が後ろにゆっくりと触れてくる。
口で自身を愛撫しながらヒクつくそこに指を這わされ、俺の口からは甘ったるい喘ぎが洩れた。
ソファにずり落ちた格好で座り込み、大きく足を開かされた状態で後ろを解されていることに羞恥心が沸き上がる。
でも、それ以上に興奮しているのも確かで。
「あ、ぁ··や、ンッ··」
快楽を逃そうと身を捩っても、口から洩れる喘ぎを止めることが出来ない。
クスクスと笑う声が耳に届く。
焦らすように指でなぞり、指先を少し差し込んではすぐに抜いてしまう。
···もっと強い刺激が欲しいのに。
「も、蒼牙···ンッ、焦らすな··」
「『先生』だよ。···それに、欲しいのならねだらないと。ね···篠崎さん?」
頭に手を添え吐息混じりに呟くと、顔を上げた蒼牙が意地悪く笑って囁く。
あ···また···
「ねだ、る···?」
痛む胸を押さえながら蒼牙の言葉を繰り返した。
見つめた顔はひどく愉しそうで、「···続き、してほしいでしょ?」とまた自身に口付けてくる。
『医者の格好なんて初めてですけど···どうですか?』
あの時、フェアじゃない···とか言って蒼牙が白衣を着たのを見た瞬間、心臓があり得ないくらい早まった。
顔が良いヤツは何を着ても似合うのだろうけど、蒼牙の場合は反則だと思う。
いつものギャルソン姿にも見惚れるが、白衣姿はまた別の色気があって。
そしていつもと違う、もう一つのもの···
···カチャ、
内腿に当たった眼鏡が音をたてた。
感じたことがない感触にピクッと身体が反応してしまう。
初めて見る蒼牙の眼鏡をかけた姿。
いつもの優しい雰囲気から、少しだけ冷たい印象に変わった蒼牙にどきっとした。
今も俺のものを愛撫しながら時々見上げてくるその顔に、かっこいいと感じる一方で表情が読みにくいことに戸惑ってしまう。
···ちゃんと顔が見たい。
そう思い蒼牙の顔に手を伸ばし眼鏡に触れた。
「せんせ、··ちゃんと触れて···ンアッ!」
呟きながら外そうとしたその瞬間···
後孔に強い刺激が走った。
「ん、いいこ。···篠崎さんのここ、もうこんなにも柔らかい。ほら、分かる?一気に奥まで入った···」
「ハッ、あ···ぁンッ··」
至極嬉しそうな、楽しんでいる声。
俺がナース服を着ていることに興奮しているのか、いつもよりも執拗に前戯をされ···焦らされたそこが物足りなさで疼くのが自分でも分かった。
「···ここ、篠崎さんの悦いとこ。後で僕のでいっぱいにしてあげるからね。」
グジュグジュと音を響かせながら、押し上げるようにして一点を刺激してくる。
「アァ···ッ!」
強烈に走る刺激に、高い嬌声が上がった。
クチッ、グチュ...グチッ···
繰り返される抜き差しに段々と解れていく後孔。
いつの間にかローションが垂らされ、濡れた指が卑猥な音をたてていく。
···どのくらいそうしていたのだろう。
やがて指が増やされ、蒼牙も余裕がなくなってきたのか「ハァ···」と熱い吐息が聞こえてきた。
「ん、···柔らかくなった··もう、大丈夫かな。」
「ンア···」
指を引き抜かれ、無くなった圧迫感に声が洩れる。
視線を向けると、座り込んで俺に愛撫を施していた蒼牙が、膝立ちになりフロントを寛げているのが目に入ってきた。
···カチャ、ジー···
ベルトを緩めチャックを下ろす音がやけに大きく聞こえる。
「ハッ、入れるよ··。」
「あ、や···」
ずり落ちた身体を力強い腕で支えられ、ソファの背もたれに深く押し付けられる。
そうして後孔に熱い塊が触れグッと力を入れると同時に「篠崎さん···」と耳元に囁かれた。
その瞬間、身体にザワッとした何かが走り、咄嗟に俺は叫んでいた。
「····ッ、やだっ、やめろ!」
自分でも驚くほどの大きな声が出る。
上からのし掛かるようにして身体を寄せていた蒼牙の肩を叩き、身体を捩って抵抗した。
「···ッ、イタッ!···どうしたの?急に。」
暴れた俺の手が顔に当たり、眼鏡が外れソファに落ちる。
手首を掴まれ「落ち着いて?」と顔を覗き込むと、目尻に軽く口付けられた。
見つめた蒼牙の顔は戸惑っていて、俺が急に暴れた理由が解らない様子だった。
「···落ち着いた?何がそんなに嫌だったの···まだ痛い?」
額をコツンと合わせ、瞳を覗き込みながら聞いてくる。
俺が首を振って否定すると「じゃあ、どうして···?」と頬を撫でられた。
優しい、俺を気遣う声。
安心できる···俺の好きな声。
俺は蒼牙の背中に腕を回すと、白衣を握りしめ呟いた。
「···眼鏡、似合うけど··お前の顔がちゃんと見えなくてヤダ。」
「·······」
「それに、白衣も···『僕』って言うのも···知らない誰かみたいで···ヤダ··」
「·······そっか、ごめんね···」
背中にしがみつくと強く抱き締められ、耳元で蒼牙が謝ってくる。
鼻の奥がつんっと痛む。
そうして俺は、一番言いたいことを口にした。
「····名前」
「え?」
「···名字で呼ばれるの···嫌だ、他人みたいで···名前で呼べ···!」
「ッ!」
絞り出した声は僅かに震えていて、ギュッと抱きつき自分の顔を隠した。
蒼牙が身体を離そうとするのを感じ、それは嫌だと抱き締める腕に力を込める。
「悠···」
「······」
「悠····悠····」
宥めるように頭を撫でながら、何度も名前を呼んでくれる。
段々と落ち着いてきた身体から力が抜け、回していた腕をゆっくりと離していった。
「悠···」
「····ん、ハッ、蒼牙···ンッ···」
名前を呼びながら重なる唇に、ひどく安心する。
僅かに開いた唇から舌が差し込まれ、俺の口腔内を優しくなぞった。
チュッ···チュッ、チュクッ···
優しく、でも深く味わうように繰り返される口付けに、俺も蒼牙の首に腕を回して応えていった。
···気持ちいい。
蒼牙と交わすキスはこんなにも気持ちいい。
夢中で差し出した舌を甘く噛まれ、優しく吸われる。
角度を変えて重なる唇に「ん···」と鼻から甘い吐息が抜けていく。
やがてゆっくりと離れた唇はどちらのものか解らない唾液で濡れ、飲み込めきれなかったそれを蒼牙が指で拭ってくれた。
「悠···ほんとに、ごめん。」
「蒼牙···」
瞳を見つめ謝る蒼牙に俺も手を伸ばした。
「悪ふざけが過ぎたね。···あんまり悠が可愛いから調子に乗りすぎた。···本当にごめん。」
「ん、いいよ···俺も··ごめん。」
蒼牙の目尻を指先で撫でる。
···良かった、傷は付いていない。
ホッと息を吐き、蒼牙を抱き寄せて耳元で囁いた。
「···いつものお前が一番好きだ」
「···!!!」
そうして足を開いて蒼牙の身体を挟み込み、白衣の上から背中を撫で下ろしていく。
「もう嫌じゃないから···続き、くれよ···」
「····ッ!···クッソ、可愛すぎだろ···もう··」
「ンッ···」
ぎゅうぎゅうと強く抱き締められ、もう一度唇を奪われた。
「···悠、愛してる···」
キスの合間に囁かれる言葉。
身体を離し目の前で白衣を脱いでいく蒼牙に、俺は「早くお前でいっぱいにしろ··」と手を伸ばしたー。
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