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出張7(※流血表現有)

side 蒼牙 心と身体が満たされていく。 誘ってきたのは悠さんだけど、もっと···と求めたのは俺の方で。 まだ整いきっていない息を飲み、腕の中で荒い呼吸を繰り返す恋人を抱き締めた。 背中に回された腕が心地好い。 「ッ、ハァ···悠···」 「ん···」 すでに二度悠さんの中で達し、それでもまだ欲しがっている自身を引き抜く。 「ッ、んぁ··」 どこか残念そうに聞こえる喘ぎ声にすぐさま入れたくなる自分に呆れながら、ベッドサイドに置いてあるティッシュに手を伸ばした。 「悠···少し腰上げられる?」 「っ、ああ。」 一週間···会えなかったぶん溜まっていた欲を吐き出した。 シャワーを浴びる前に少し拭き取っておいた方が良いだろうと、僅かに身体を浮かす悠さんを支える。 「···自分でするから、むこう向いてろ。」 「なに、恥ずかしい?」 「·········」 真っ赤になって睨んでくる恋人にクスクスと笑い「俺はしたいけど。」と囁くと、背を向けてベッドに腰掛けた。 背後からゴソゴソと動く音と「ッ、」と息を詰める様子が伝わり、振り向きたいのを我慢する。 今日の悠さんはとにかく積極的で、エロ可愛くて。 いつも言葉で伝えることを恥じらうこの人が、何度も『愛してる』と囁いてくれた。 それが本当に嬉しくて···余裕の表情を見せていたけど本当はすぐにでもイってしまいそうなほど、この人の言動に興奮していた。 シックスナインなんて体勢シラフの時にはしてくれないだろうと思っていた。 けど躊躇いながらも俺の顔を跨いでくれたときには、カッコ悪いけど鼻血が出るかと思ったほどだ。 にやける顔を必死で隠し、俺のものに舌を這わす悠さんを気持ちよくさせることに専念する。 丹念に解しそろそろいいかと思っていたとき、悠さんの方が身体を起こして俺を見つめた。 そして次いで発せられた言葉は信じられないようなことで。 『···もう、欲しい』 都合のいい聞き間違いかと思った。 見上げた悠さんはひどく扇情的で、浮き出た肩甲骨や捩った腰のラインに釘付けになった。 なにより···『欲しい』なんて直接的なことを言われたのは初めてで。 おかげで残っていた理性は全て吹っ飛び、その後は欲望のままに触れ、何度も揺さぶり突き上げた。 『ンアぁッ!や、あぁ···そ、が···』 甘く響く喘ぎと、目尻に溜まった涙。 全て俺のものにしたくて···涙を舐めとり、その唇をキスで塞いだ。 『ンッ、悠···愛してる』 何度も囁いた俺の言葉に『··俺も··愛してる』と返してくれる。 その度に強まる締め付けに、イきそうになるのを耐えた。 絡まる足、回された腕、熱い吐息、汗ばむ身体···その全ての感触が今も残っている。 ···ダメだ、思い出すな俺。 思い出したらまた触れたくなるから。 「···先にシャワー借りるぞ。」 悠さんの声にハッとする。 俺の横を通りフワリと漂う甘い香りに一瞬クラっとするも、取り戻した理性が手を伸ばすのを止めた。 「············」 「···なに?」 ベッド脇に落としていたズボンを履いた悠さんが、Tシャツを片手に黙ったまま俺を見つめてくる。 その何か言いたそうな顔に首を傾げた。 「·····な··のか?」 「···ごめん、なに?」 小さくボソボソと話す声が聞き取れず、目の前に立つ悠さんの手を取った。 引き寄せながらもう一度尋ねると、顔を赤く染めながら悠さんが口を開く。 「だから···血は吸わないのか?」 「!!」 予想もしていなかった言葉に、一瞬固まってしまった。 俺の言葉を待っているのか、じっと見つめてくるのにゴクリと小さく喉が鳴った。 「······いいの?」 「いいから聞いてるんだが。」 座ったまま悠さんの腰を抱き締め、顔を埋めて確認する。 頭に暖かい手が触れ、優しく髪を撫でられると胸がギュッと苦しくなった。 頭上からクスッと笑う声が聞こえゆっくりと顔を上げると、大人の色気を纏い優しく微笑む悠さんと目が合う。 「俺がいなかった間の寂しさを埋めるんだろ?···俺だってお前と離れて···寂しかったし、眠れなかったよ。」 「··え、」 「だから、全部お前にやるし···蒼牙を感じたい。」 そう言って覆い被さるように俺を抱き締めてくれる。 心臓がドクドクと音を鳴らし、鼻を擽る香りと紡がれる言葉に頭がくらくらとする。 「悠···」 「·····ん、」 名前を呼ぶと、チュッとこめかみにキスを落とされた。 そのまま唇は頬を伝い、俺の口に重なってきた。 チュッ、チュッ··· 何度も軽いキスを繰り返し、暖かい手が俺の額に伸びる。 そうして前髪をかき上げると、そこにもキスをしてくれた。 「蒼牙···俺にも付けさせろ。」 「何を?」 額に唇を触れたまま囁かれ、擽ったさに笑いながら返した。 すると悠さんは俺の顎を持ち上げ、するりと首筋を撫でてきた。 「ここに···俺のものって印。」 「····もちろん。」 クスッと笑いながら顔を少し傾け首筋を晒す。 悠さんがこんなに独占欲を見せてくれることが嬉しい。 ゆっくりと目を瞑ると顔を寄せてくる気配を感じた。 「····んッ、」 左側の首筋にチュッ···と音をたてた後、そこを強く吸われる。 少し洩れた声に「可愛いな。」と小さな声が聞こえて、また吸い付かれた。 チクリとした痛みと、全身に走る甘い痺れ。 やがて身体を離した悠さんが、俺の首筋を見つめて微笑んだ。 「·····よし。」 満足そうな声。 見えないけど感じた強さから、かなりくっきりと痕が付いているだろう。 まだ甘い余韻の残る首筋を撫で、悠さんに手を差し出す。 「悠···」 「ッ、わっ!」 握り返された手を強く引っ張り身体を動かす。 もう一度ベッドに押し倒し、驚きに目を見開いている悠さんの頬を撫でた。 「悠···ありがとう。」 俺が求めているように、貴方も俺を求めてくれた。 俺が寂しかったように、貴方も眠れない夜を過ごしてくれた。 言葉で愛を囁き、行動でそれを裏付けてくれた。 それらのこと全てに想いを込めて伝える。 「···早く、お前の痕を残せ。」 綺麗に笑い俺の手をとると、悠さんはゆっくりと顎を上げた。 あぁ···なんて綺麗なんだろう。 目の前に白い首筋が晒され、脈打つそこに吸い寄せられる。 「愛してる···」 「ん、···ッ!」 ペロリと一度舐めキスを落とすと、暖かいその肌に牙をたてた。 途端に広がる甘くアルコールのような芳醇な香り。 舌に感じる暖かい液体が、俺の欲望を満たしていく。 やがて優しく頭を撫でてくれていた手が動かなくなり、悠さんの身体から力が抜けていった。 チュ···· 唇を離し、滲み出る血を見つめた。 赤ワインのように鮮やかなその色に、目眩がするほど興奮している。 「···全て俺のものだ。」 誰に聞かせるでもなく呟くと、またそこに唇を寄せた。 今日一日、貴方を離すことは出来ないだろう。 そして貴方もそれを望んでいる···そう感じるのは、きっと自惚れなんかではないから。 強く吸い付きその味に満たされながら、眠ってしまった悠さんを強く抱き締めたー。

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