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似た者同士(短編)

side 悠 明日は休日。 せっかくなので酒でも飲みながら映画を観ようと思い二人で近くのレンタルショップに出掛けた。 『何を借りるかは言わない』と勝手なルールを作り、それぞれが好きな映画を一つずつ借りる。 帰りはコンビニにも寄りビールとつまみを買うと、俺達はマンションへと帰った。 「まさかのホラー···」 DVD をセットしながら蒼牙が呟く。 「それ、観てみたかったやつ。一人だと怖いからお前も付き合え。」 「···俺だって怖いですよ。」 「知ってる。だけど付き合え。」 少し前に話題になった邦画を借りてきた俺に、蒼牙が苦笑する。 以前、『洋画のホラーは大丈夫ですけど、邦画のホラーは苦手です。』と言っていた。 夏のホラー特集が始まるとチャンネルをかえていたとこをみると、恐らく本当に苦手なのだろう。 俺は苦手な訳ではないが好んで観る方でもない。 今回はどちらかと言うと、蒼牙を怖がらせたい気持ちのほうが強い···と言ったら拗ねてしまうだろうから黙っておこう。 「ほら、早くつけろよ。」 ニッと笑いながらそう言うと「···わかりましたよ。」と俺の隣に移動してくる。 「何となく悪意を感じないでもないですが···」 「気のせいだろ。」 「·····うわぁ、嘘くさ。」 他愛もないやり取りにクスクスと笑う。 そうして定位置となった場所に二人で並び座ると、「じゃあ、つけますよ。」と再生ボタンを押した。 「夜中にトイレに行くときは、悠さんを起こしますから····」 「子供か。」 約2時間半後、背後から俺を抱き締めた状態で恨みがましく呟くのに笑ってしまう。 始まってから暫くすると蒼牙は俺の後ろに回り、抱き締めてきた。 どうやら本当に怖かったらしく、時々ビクッと震える様子が可愛かった。 さらには『今、何が出ました?』『もう終わりました?』と聞いてきたということは、途中目を瞑っていたに違いない。 「お前さ、見えないほうが怖いだろ。」 腕を外しながらそう言うと、身体の向きを変えて向かい合う体勢になる。 そうして耳とシッポが垂れてしまった犬のような蒼牙にクスクスと笑いながら口付けた。 チュッ···と音を鳴らして離れた唇をペロリと軽く舐め、至近距離で目を見つめる。 「でも、可愛かったから··俺は満足。」 「悠さん····」 「ん····」 ゆっくりと触れる唇が柔らかい。 軽いキス一つで互いに身体に熱が集まり、もっと欲しくなってしまう。 「知ってますか?イイコトしてたらお化けは出ないらしいですよ?」 「····知らないよ。」 クスクス笑いながらもう一度唇を合わせると、俺は身体を離した。 このままベッドに行くのも悪くはないが、蒼牙が何を借りてきたのかも気になる。 「·······ここで離れるとか、鬼ですね。」 「うるさい。お前が何を借りたのか、気になるんだよ。」 ハァ···とため息を吐く蒼牙を笑い、俺は袋からDVD を取り出した。 「··············おい」 そして、そのタイトルを見て一瞬固まってしまう。 隣でニコニコと笑っている蒼牙を軽く睨むと、しれっとした態度で肩を竦めてみせた。 「悠さん、観たことないだろうなって。面白いらしいですよ?」 そう言って蒼牙はリモコンを取ると「はい、再生しますから入れてください。」と楽しそうに笑った。 「······くそ、やられた。」 俺の手の中には、少し昔のアメリカ映画。 そのタイトル名は、確か巨大ミミズのパニック映画だったはずだ。 俺が観たことないって·····あぁ、そうだよ! 何が楽しくてミミズが主役の映画を借りるのか。 こんなことなら、さっきの流れでセックスに持ち込んでおくんだった。 DVDを見つめそんなことを考えていると、横から伸びてきた手が俺の頬をスルリと撫でた。 「『ベッドに行けば良かった』って顔してる。」 「····ッ!」 クスクスと笑いながら言い当てられて、顔が赤くなるのが自分でもわかる。 「俺はそれでも良いですよ?···というか、そっちが嬉しいです。」 身体を寄せて耳元でそう囁く蒼牙に、ドクッと心臓が鳴った。 甘く誘う声に身体が期待で熱を持つ。 ····だけど、これで頷くのは悔しい。 「····見る。」 「え~···無理しなくて良いんですよ?」 「····やだ、見る。」 「···いったい何プレイですか、これ···」 ゴソゴソと動きDVDをセットしている俺の背後でブツブツと文句を言っているのが聞こえ、笑ってしまう。 「ほら、そっちに行け。再生するぞ。」 「····はい。」 蒼牙の肩をグイグイ押しながら、また定位置に戻った。 蒼牙は怖がりながらも俺に付き合って観たのだから俺も意地でも最後まで観てやる。 大丈夫。 怖いわけではない、観られるハズだ。 自分に言い聞かせ、再生ボタンを押す。 「····選択ミスだったなぁ···」 まだ文句を言っている蒼牙に半ば呆れながら、始まった映画に視線を向けた。 そして、その後。 映像に堪えられなくなった俺がリモコンに手を伸ばすのを嬉々とした様子で見つめてくる蒼牙。 その脇腹を殴り停止ボタンを押したのは···開始から45分後のことだったー。

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