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不自由さを理由に7
「手···本当に大丈夫か?」
包帯を巻き直しながら聞くと、クスクスと笑う声が耳元に落ちてくる。
「全然。何だったら、証拠見せようか?」
そう言って蒼牙の右手が太股を撫でてくるのを、パシッと叩いて落とした。
「·······十分過ぎるほど見せてもらったから、もういい。」
赤らむ顔を隠すように湿布を薬箱にしまう。
あれほど『我慢しろ』と言っておきながら、自分が我慢できなかったことが恥ずかしい。
ソファの上で後ろから何度も奥を突かれ、高い喘ぎ声を上げ続けた。
『左手使えなくても··ハッ、いくらでもやり方はあるよ···、』
激しさを増すセックスの最中、滲む涙を舐めとりながら囁かれた言葉。
その言葉通り、蒼牙は片手で俺のことを翻弄し続けた。
雰囲気と快楽に流されて俺から蒼牙を求め動きもした。
その様子を愛しげに見つめてくる蒼い瞳に言い様のない胸の高ぶりを感じ、何度もキスをしては深い場所で繋がりあった。
思い出すだけでも羞恥で逃げ出したいようなことをした自覚はある。
···でも、なんだか堪らなかったんだ。
失ったらどうしようと感じたあの恐怖、
一人で過ごしたマンションの広さ、
治りかけの傷を見たときの安心感、
色々な想いが重なって蒼牙を感じたくて仕方なかった。
「···俺だって、貴方が怪我したら不安になるよ。」
思わぬ言葉にパッと顔を上げ蒼牙を見つめた。
からかっているのでも面白がっているのでもない、優しい表情。
それは俺が感じていた恥ずかしさや戸惑いを全て拭ってくれるようで。
伸ばされた腕に抗うことなく身を委ねた。
「本当に大丈夫だから。手も···明日にはもうほとんど治る。だから安心して?」
「ん、···分かった。」
ギュッと抱き締められその広い背中に腕を回す。
鼻先を首筋に埋めスンッと匂いを嗅いだ。
同じジャンプーを使っているのに、どうして蒼牙は良い匂いがするのだろう。
ほっとするような、だけど泣きたくなるような···胸が苦しくなる香り。
「あのね···そういう可愛いことしてたら、今度はベッドに連れていくよ?」
「ッ、それは、」
クスクスと笑いながら耳にチュッ···とキスをされ、慌てて身体を離した。
楽しそうに笑う蒼牙から顔を背ければ、ソッと髪に触れてくる。
「冗談だよ。明日があるからね、今日はもうしない。」
落ちていた髪を耳に掛け、そのまま耳を擽るように触れてから離れていく手。言われた言葉よりも、その思わせ振りな手つきに顔が熱くなった。
「真っ赤。俺の奥さんは本当に耳が弱いね。」
「な、···うるさい!」
「アハハハ!」
カラカラと笑いながらそんなことを言われ、ソファの上にあったクッションを投げつけた。
それを軽々と受け止め抱き抱えると、蒼牙はその場にゴロンと転がった。
「···これ、悠の匂いがする。」
「ッ!もう、お前黙ってろ!!」
「いたっ!怪我人に何するんだよ!」
クッションに顔を埋めて呟く蒼牙の背中を蹴る。
さっきまでそのクッションにしがみつき、散々啼かされたことを思いだしてしまい···恥ずかしくて何度も蹴った。
「何が怪我人だ!怪我人ならもっと大人しく寝てろ!」
「···誘ったのは悠のくせに。」
「!!!」
そう言ってクッションから顔を覗かせて呟く蒼牙はニヤニヤしていて。
「たまには怪我をしてみるのも良いね。あんなにエロい悠が見られるなら····いった!」
「知るか!口を怪我すれば良かったんだ!」
俺に叩かれた左手を撫でながら大袈裟に痛がる蒼牙に言い捨て、俺は逃げるように寝室へと向かったー。
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