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12月15日
side 悠
12月に入り町並みは一気にクリスマスムードに包まれた。
きらびやかなイルミネーションを眺めながら駅までの道を歩く。
するとコートのポケットに入れていたスマホが着信を告げた。
『今日も少し遅くなります。ごめんなさい。』
···またか。
チェックした蒼牙からの連絡に小さくため息を吐いた。昨日に引き続き蒼牙の帰宅時間が遅いことに、若干の寂しさを感じてしまう自分に呆れてしまう。
今日は鍋にでもしようと思っていたが、蒼牙の帰りが遅いのならメニューを変えよう。一人で鍋をつついても美味しくない。
「簡単にうどんにでもするか···」
一人呟いた言葉は、白い息と共に消えていく。
残業をして帰ってくる蒼牙に温かいものを食べさせてやろう···そんなことを考えながらマンションへと帰っていった。
「すごく美味しいです。」
ニコニコとそう言う蒼牙は、本当に美味しそうにうどんを食べていく。
こんな簡単な料理でも『美味しい』と言ってもらえると嬉しくなる。
「仕事、忙がしいんだな。明日も遅くなりそうなのか?」
蒼牙が食べている姿を向かいで見つめながら、何の気なしに尋ねた。
すると蒼牙は一瞬箸を止め、少し困ったように笑った。
「えっと···残業なわけではなくて、元仕事仲間に頼まれて手伝いをしているんです。明日は大丈夫ですけど、また遅くなる日があります。」
「手伝い?」
ハッキリとしない口調に眉を寄せると「はい。」と返事をしたまま蒼牙は黙ってしまった。
こうして黙ったという事は、これ以上は話すつもりがないということだ。
「そうか···頑張れよ。」
そう言って微笑めば蒼牙もニコリと笑った。
深刻な問題を抱えているわけではないのなら、俺もそれ以上聞くつもりはない。
蒼牙にもプライベートの付き合いがあるのだし、ちゃんと連絡を寄越し帰ってきているのだから。
「うどん、まだお代わりありますか?」
「まだまだあるよ。ほら、入れてきてやるから寄越せ。」
丼を片手にそう聞いてくるのに、俺は手を差し出しながら立ち上がった。
「ありがとうございます。···悠さん、」
「ん?」
キッチンに向かおうとすると呼び止められ振り向けば、俺を見つめる蒼い瞳と目が合う。
「変なことしてる訳じゃないですから、心配しないでくださいね。」
フニャッと笑いながらそう言う蒼牙に、思わず吹き出してしまった。
「何も心配なんかしてないよ。何か問題でも抱えてるのなら別だけど、違うだろう?」
「はい。」
「ならいい。待ってろ、すぐに持ってきてやるから。」
迷いなく答えるその声にニッと笑ってみせ、俺はキッチンへと足を向けた。
背後で「だから、その笑顔は反則ですってば···」と赤面している蒼牙の気配に、ますます笑いが溢れたー。
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