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12月15日朝
side 蒼牙
12月15日
今日は悠さんの誕生日だ。
平日とあって当の悠さんは仕事だが、俺は休みをもらっている。
キッチンでコーヒーメーカーに豆をセットしドリップを開始させてから寝室へと向かう。
今日は頑張って悠さんよりも早起きをした。
朝食の準備もしたしあとは悠さんを起こすだけだ。
特別な今日という日は、とことん悠さんを甘やかしたい。
まだカーテンを引いている室内は薄暗く、スヤスヤと眠る姿にクスッと笑いが溢れた。
無防備な寝顔を暫く見つめ、頬に掛かった髪をソッと指で払う。
「ん····」
掠れた声でモゾッと動く姿に愛しさを感じながら時計を確認した。
そろそろ時間だな。
本当はもう少し寝てても大丈夫だけど、朝は余裕をもって行動したがるから。
そう思いさらさらな前髪を撫でながら声をかけた。
「悠さん、起きてください。悠さん···」
「····そ、が···?」
「はい。おはようございます。」
ゆっくりと瞼を開き数回瞬きをした後で俺の名前を呼ぶその様子に、自然と微笑みが溢れる。
「ん、···どうした、今日は早いな···」
身体を起こしながらそう聞いてくる悠さんが、小さく欠伸をし視線を俺に向ける。
ベッドに座り込むその横に俺も腰を下ろし、少し涙ぐんだ瞳に指を伸ばした。
指の背で涙を軽く拭う。
「だって、今日は特別な日ですから。」
そう言って涙の付いた指をペロッと舐めると、悠さんの顔が僅かに赤く染まった。
「特別?····ああ、そうか。」
俺の言葉を察した悠さんが照れたように笑う。
その笑顔か堪らなくて、寝起きの温かい身体をギュッと抱き締めた。
「はい。誕生日おめでとうございます、悠さん。」
そう伝え顔を覗き込めば、はにかんだような表情を見せていて。
「ありがとう、蒼牙。」
お礼を言ってフワリと笑う悠さんに視線を奪われる。
···すっげー可愛い。
そう思ったのと身体が動いたのは同時で、気付けばその柔らかい唇に俺のそれを重ねていた。
「ん···」
チュッ···
音を響かせ唇を離せば、悠さんは照れたように顔を俯かせる。
···本当はもっと深いキスをしたいけど、今はこれで我慢だな。
可愛い反応に欲を抑え込み、ゆっくりと身体を離した。
「朝ごはんできてます。顔洗ってきて下さい。」
クスクス笑いながら頭に軽く口付ければ、「···ありがとう。」と俺を見つめてくる。
嬉しそうなその表情に優しく微笑みかけもう一度軽く口付けると、俺はキッチンへと向かったー。
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