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12月15日夜

side 悠 「ただいま。」 「お帰りなさい、悠さん。」 玄関でニコニコと出迎えてくれた蒼牙に微笑みかける。 朝から俺のために早起きをしていた蒼牙は、今も黒のエプロンを着用してキッチンから出てきた。 もしかしたら···いや、多分確実に今日一日、誕生日を祝ってくれようと動いてくれていたのだと思う。 「もう少しでできるから、先に風呂入ってきて下さい。」 「ん、ありがとう。」 リビングのソファに座った俺にそう言うと、蒼牙は腰を屈めた。 ネクタイをほどいていると顎に指がかかり、そのままクイッと持ち上げるとチュッと触れるだけのキスを落とす。 「上がってきたらお祝いしましょうね。」 「····っ、」 あまりにも自然に触れ、そして離れていく蒼牙に思わず赤面してしまう。 そんな俺にフッと笑うと蒼牙はキッチンへと戻っていった。 恥ずかしいが、それでもやっぱり嬉しさのほうが勝る。 ···今日は蒼牙の言葉に素直に甘えるのも良いかもしれないな。 そんな風に思いながらソファから立ち上がったー。 「すごいな。これ、お前が作ったのか?」 「·····!」 夕食後、ダイニングからリビングに移動した俺に『少し待っててください』と告げ、蒼牙はキッチンから白い箱を持ってきた。 ケーキと思われるその箱を開く蒼牙はどこかソワソワしていて、現れたケーキを見てその理由が分かった。 真っ白な生クリームの上には鮮やかな苺が並べられ、縁には少し歪な形のクリームが飾られている。 プロの作ったケーキとは違う、だけどプロ以上に想いを込めて作られたケーキがそこにはあった。 「はい。あの、俺の手作りって···何で分かったんですか?」 蒼牙から聞く前に俺が『手作り』に気がついたことが不思議だったのか、照れたような口調で聞いてくる。 「分かるよ。こんなに綺麗で美味しそうなケーキ、初めてだからな。店で売ってるケーキみたいに完璧じゃなくても、こっちのほうが俺は好きだ。····ありがとう。」 蒼牙を見つめニッと笑うと、本当に嬉しそうに「はい。」と表情を崩した。 可愛いヤツ。 こんな、作ったこともないケーキを焼いて、料理もして。 全て俺のためにしてくれていることがこんなにも嬉しくて、そして幸せで。 「蒼牙」 「はい?」 ケーキを切り分けてくれている蒼牙の名前を呼び、顔を上げたところへ唇を寄せた。 チュッと音を鳴らして頬にキスを落とすとナイフを片手に固まってしまった。 「本当にありがとう。これ食べたら···ベッド行こう?」 「っ、はい」 至近距離でそう囁けば、蒼牙が一瞬息を飲むのが分かった。 そしてみるみるうちに顔を赤らめていくのが妙に可笑しい。 「そんな顔するな。我慢できなくなるから。」 身体を戻しながらクスクス笑うと「···煽ったのは悠さんですからね。」と悔しそうに呟いたー。

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