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12月15日終
side 悠
「一緒に入ってもいい?」
「ダメに決まってるだろ!」
「残念。じゃあ、ゆっくり入ってきて。」
そう言って笑うと蒼牙は俺の頭にキスを落とした。
先程までのセックスの余韻が広がるこの甘い雰囲気から逃げるように立ち上がるとバスルームへと向かった。
熱い湯を浴びながら大きく息を吐く。
蒼牙を誘ったのも、煽ったのも俺だが、まさかケーキの生クリームをセックスに使われるとは思わなかった。
思えば、俺が先にアイツに苺を食べさせたところから始まっていたわけで···自分の考えなしの行為に頭が痛くなる。
あんなことをすれば蒼牙があれくらいのことを仕掛けてくるのは分かりきったことだというのに。
おかげで身体はベタベタで、こうしてもう一度シャワーを浴びるはめになってしまった。
「····っ!」
身体を洗っていると足の間をドロリとしたものが流れ落ち、その感覚に思わず息を詰めた。
何が流れ出たのかなんて見なくても分かるだけに羞恥で顔が赤くなっていく。
一度のセックスでは満足しなかった蒼牙の欲を全身で受け止めた。
翻弄され、喘がされ、自分からも積極的に動いた自覚があるだけに、蒼牙一人だけを責められる訳ではない···
訳ではないが···!
あの阿呆、バカ、絶倫、変態!!
心の中で吐けるだけの悪態を吐きながら、ソコも洗い流していく。
···でも一番のバカは俺だ。
あんなことをされて恥ずかしくて抵抗したが···嫌な訳ではなかった。
結局、蒼牙にならば何をされても許してしまうほどにアイツに惚れていて、自分から求めてしまうほどに蒼牙に触れられるのが好きなのだから。
「でも、二度と生クリームは使わせない···」
思い出すだけで顔が熱い。
いつもよりも執拗に感じた愛撫のあれこれが甦り、頭からシャワーを浴びながら呟いたー。
シャワーから戻るとリビングのソファに蒼牙が座っていて。
「悠、ここ座って。」
自分の隣を叩きながらそう言われ、素直に腰を下ろした。
「本当はね、ケーキ食べたら渡すつもりだったんだけど···あんなに情熱的に誘われて我慢出来なかったから。」
「·····うるさいな。」
クスクス笑う蒼牙から顔を背けると、「照れなくても良いのに。」と余計に笑われた。
「はい、これ悠に。」
「え、」
蒼牙に手を掴まれ、手のひらに小さな箱を乗せられた。綺麗に包装されたそれを見つめ、蒼牙に視線を向ける。
優しく微笑みながら俺を見つめる瞳と視線が絡まりドキッと心臓が高まった。
「誕生日おめでとう。悠が生まれてきてくれて、そしてここに居てくれる。貴方と出会えて俺は最高に幸せです。」
そう言って頬をするりと撫でられる。
真っ直ぐに見つめながら伝えてくれるその言葉が、俺の心を満たしていく。
「···ありがとう、蒼牙。開けてみてもいいか?」
手渡されたプレゼントと蒼牙を交互に見つめれば「もちろん。」と照れたように笑う。
リボンをほどき、綺麗に包まれた包装紙を丁寧に開く。
現れた白い箱の蓋を外し中身を確認して、自然と自分が微笑んでいることに気付いた。
「気に入ってもらえると良いけど···っと!」
隣から手元を覗き込んでくる蒼牙の身体を抱き締める。
温かい身体に腕を回し後頭部を撫でた。
「ありがとう···すごく嬉しい。明日から使うよ。」
「うん。きっと似合うと思う。」
ギュッと抱き締め返してくれる蒼牙の耳元に囁き、抱き締めたままもう一度手の中にある箱を見つめた。
シルバーのタイピン。
さりげなく埋め込まれた小さな蒼い石がキラリと光る。
それは蒼牙の瞳と同じ色で。
···こんなに幸せな気持ちになれる誕生日プレゼントは初めてかもしれないな。
「仕事の間も蒼牙が側にいるみたいだ。···大切にするよ。」
「うん···良かった。」
吸い込まれそうな蒼い瞳を見つめながら微笑めば、蒼牙は嬉しそうに笑う。
「本当にありがとう。····愛してるよ、蒼牙··ん、」
想いを込めた言葉は蒼牙の口に吸い込まれていったー。
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