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X'masイブ朝
side 悠
「·····なんでここにいるんだ?」
朝、目が覚めて視界に入ってきたのは寝室の壁。
昨夜は蒼牙の熱がまだ高くて。
ゆっくり休んで欲しいからと、嫌がる蒼牙を説得し俺はソファで眠った。
なのに、目が覚めたらベッドの中で。
いつもと変わらない、蒼牙の暖かい体温を背中に感じながら目が覚めた。
···俺が眠っている間に、ここまで抱き上げてきたのか。
熟睡していたとはいえ、全く気づかなかったことが少し恥ずかしい。
そんな風に思いながら、腰に回った蒼牙の長い腕をソッと下ろし、起こさないようにベッドから足を降ろした。
そうして立ち上がろうとして、ひどく覚えのある倦怠感に襲われた。
少しだけ頭がフワフワとする、そして何となく気だるいこの感じ···
自分の首筋にソッと触れ、振り返って眠っている蒼牙を見つめた。
スー···スー···と規則正しい寝息をたてる恋人の姿に、クスッと笑いが溢れる。
···俺の血で、少しは回復していると良いけど。
眠っている間に、どうやら血を吸われたらしい。
ベッドまで運ばれたことに気づかなかったのはそのせいだったのかと、妙に納得した。
そして同時に、身体が弱っているときに俺の血を求めてくれたことが嬉しいと思った。
何だかんだで、昨日は雑炊もリンゴもあまり食べられなかったから。
食欲は無くても、この行為はまた別のものであるらしい···そう思うと自然と微笑みが洩れた。
起きてきたらコイツは『ごめんね』と謝るのだろう···そんなこと気にしなくて良いのに。
綺麗な寝顔にソッと触れてみる。
手のひらに伝わる体温は昨夜程ではないがまだ高くて。
会社に連絡して今日は休みをもらおう。
俺の自己満足かもしれないが、病気の時くらい側に居てやりたい。
それに···蒼牙は申し訳ないと思うかもしれないが、俺としては少し得した気分だ。
クリスマスに特別思い入れがあるわけではないが、こうして愛しいヤツと一緒に過ごせるのはやっぱり嬉しいと思う。
それが例え看病であったとしても。
今日はゆっくり蒼牙と過ごそう。
そして明日には熱が完全に下がれば良い···そう願いながら俺は蒼牙の髪を撫でた。
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