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アニマルパニック2
side 蒼牙
「失敗した...」
「んあ?何が?」
休憩室で大きくため息を吐けば、一緒に休憩中の内藤くんがポリポリとお菓子を食べながらこっちを向いた。
「んー....実はね、」
あの菓子知ってる。
昔からナオが好きなやつだ...
ついに食の好みまで合わせだしたかと思わず笑いながら、内藤くんに昨夜のやり取りを話した。
...........
...................
「で、結局着けてもらえなかった...やっぱり最初に俺が着けて見せてたのが失敗だったのかな?どうしたら良いと思う?」
「........どうもしなくて良いと思う。」
「えー...」
俺の話を聞いていくうちに内藤くんのお菓子を食べていた口は止まり、その手も袋に入ったまま固まっていた。
そうして発した彼の一言に思わず不満の声が上がる。
こちらをじっと見るその瞳は哀れなものを見るような目で「悠さん...気の毒に。」と呟くその口振りは完全に俺のことをバカにしたものだった。
「だいたい、お前の可笑しな言動にいつも悠さんが付き合ってくれてるんだろ。これ以上嫌がることしてあげるなよ!」
「嫌がることがしたいわけじゃないよ。でも、ナオがウサギの耳つけてるところ想像してみてよ?見てみたいって思わないか?それと同じ。」
「........................」
内藤くんの言葉にそう切り返せば、ピクッと体を動かし黙ってしまった。
だんだんと赤らんでいくその様子に「ほらみろ。」とニッと笑えば、慌てて頭を振り「うるさいな!」と怒られた。
「でも見たいだろ?」
「まぁ、そりゃあナオちゃんは女の子だし...可愛いし...てか天使で女神だし...ウサギも良いけど猫耳とか萌える...絶対似合う...鼻血もんだよ....」
「........ごめん。聞いといてなんだけど、内藤くん気持ち悪いよ。人の妹を変な目で見ないでくれる?」
ブツブツと顔を赤くしたまま呟く姿に呆れて苦笑すれば、ハッと顔をあげた内藤くんがキッと睨んできた。
「っ、とにかく!悠さんに変な格好させないでくれよな。あの人は格好いい大人の男で、俺の憧れなんだから!」
「確かに悠さんは『格好いい大人の男』だけどね。....内藤くん、一緒に考えてくれたら良いものあげるよ?」
「はぁ?」
「対策、一緒に考えてくれたら『ナオのお宝写真』写メしてあげるけど?」
「...う、」
「たぶん、ナオは恥ずかしがって見せないと思うよ?...高校の時の文化祭の写真なんだけどなぁ。」
「.....蒼牙が持ってるのか?」
「俺がこっそり撮った。実家にあるよ?」
「........ちなみに、文化祭で何やったの?」
「あ、食いついた。じゃあ、ちゃんと考えてくれるのなら教えてあげる。どうする?」
「..............ごめんなさい、悠さん...この悪魔の誘惑からは逃れられません....」
ガックシと項垂れる内藤くんの様子から了承の意を受けとり、俺はニッと笑った。
ほんと、内藤くんは扱いやすくて助かる。
「よし、成立。ちゃんと良い案を考えてね。」
項垂れている頭をポンポンっと叩けば、恨みがましく見上げてくる。
「分かったよ....考えるから。ナオちゃんが何やったのか教えろよな!」
「はいはい。あのね....」
半泣き状態で俺を指差す内藤くんをクスクスと笑いながら、悠さんを落とすための作戦を考えていったー。
「はい、どうぞ。お掛けください。」
仕事の時よりも丁寧な動きでダイニングテーブルのイスを引く。
テーブルの上にはセッティングされたランチョンマットと食器。
せっかくのギャルソン姿、きちんと悠さんを接待したくてレストランから借りて帰ったものだ。
「......あ、ありがとう。」
僅かに頬を染め俺から視線を反らしながらイスに座るのに微笑みかける。
うん、内藤くんの言った通りだ。
昨日とは全く様子が違う。
悠さんの明らかに照れている態度に気をよくして、キッチンへと向かった。
『その仕事着で攻めてみたらどうだ?』
昼間、内藤くんからもらったアドバイスは俺が考えもつかなかったことで。
『悠さん、お前のギャルソン姿好きだろ?仕事の様子見に来るくらいだし。その格好でウサギ耳着けてたら、なんか雰囲気に流されて悠さんも着けてくれるんじゃないのか?』
『......なるほど。』
そう言われて妙に納得してしまった。
確かに悠さんは俺のこの格好をいつも褒めてくれる。
でもまさか、この格好でウサギ耳を着けるなんて発想...全く思い付かなかった。
『ありがとう内藤くん!持つべきものは変態の友だね!』
『お前にだけは言われたくないわ!』
感謝の言葉を伝えれば、するどい突っ込みで返されたけども。
そんなことにはお構いなしに、ギャーギャーとうるさい内藤くんの手を取り何度もお礼を伝えた。
キッチンからダイニングにちらりと視線を向ければ、そこにはテーブルに肘をついて顔を隠している悠さんの姿。
その滅多に見られない動揺している様子に口角を上げ、作っておいた料理の皿を手に取った。
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