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第10話 兄の言葉
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束の間の失神のあと意識を取り戻した知矢は、既に体を綺麗にされ兄の腕の中にいた。
典夫は弟が目覚めたのを知ると、その柔らかな髪に触れ聞いて来た。
「知矢、髪伸ばしてるのか?」
知矢はドキッとした。
髪を伸ばし始めてから両親には散々指摘され、切れと言われ続けてきたが、典夫は一切そのことには触れなかったからだ。
だから知矢は時々「お兄ちゃんは僕には興味がないのかな」と落ち込んでいた。
知矢はホッとして、兄の手に自分の手を重ねる。
「……伸ばしたら変?」
「変じゃないよ。よく似合ってる……でも」
「でも何? お兄ちゃん」
典夫の含みのある言い方が気になった。
「なんでもないよ。明日学校なんだから、もう寝ろ、知矢」
「やだよ、眠れない。でも、何? お兄ちゃん」
しかし典夫はかたくなに答えをくれず、知矢をギュッと抱きしめて、
「ほらもう寝ろって」
そう言うばかりだ。
知矢は最初のうちはジタバタと抵抗していたが、激しいセックスで疲れた体は眠りを欲していて。
結局、答えを聞くことなく、眠りの世界へと落ちて行った、
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