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第11話
状況が変わったのは、半年ほど経ったころだろうか。
アジア雑貨のブームが徐々に来て、兄がとあるアジアンカフェに卸した商品が雑誌で紹介されたのだ。
マニアな人というのはどんなジャンルにもいるもので、そこから中国少数民族の超レアな雑貨を扱う貴重な会社として、マニアの間で認知されたらしい。
ニッチなニーズにマッチした櫻花貿易公司は、その世界ではそこそこ有名になったのだ。
ホームページのアクセス数が一気に増え(もちろんたかが知れている)、俺は以前よりすこし忙しくなった。
週に一度だった発送は五日に一度、三日に一度と頻度が増え、郵便局や宅配の配達人とはただの顔見知りから会話を交わす知人程度の仲になった。
本業の雑貨でも会社は順調に売り上げを伸ばしてそこそこ収益を上げているらしく、来年は上海と北京でカフェを出すことになったという。
何でカフェ?とふしぎだったが、気軽にコーヒーを飲めるカフェが今の中国にはないそうで、雑貨屋兼カフェのような店を作ると兄は張り切っている。
俺には中国での商売のことはわからないが、兄は成功するだろうなと思う。
日本では成功するんだろうか。
今のところ、俺一人ですべての業務を引き受けているが、最近は個人の買い物以外に企業からの引き合いが来るようになっていた。
中国での生産拠点がすこしずつ整って来て、刺繍製品や手織り絨毯、螺鈿細工なんかはデザインから注文に応じることができるようになったあたりから、その手の話がぐっと増えた。
人に会いたくない俺としては歓迎したくない事態だ。
でも兄の会社が成功するのは嬉しい。
アルバイトで表には出ることがないとはいえ、俺も一生懸命、商品ページを作って売り込んで、発送してと日々頑張っているから、それが認められるのはやっぱり嬉しいのだ。
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